ビックリマンワールドを哀切に語る
「あおぞら市場」は仙台市太白区に嘗てあった複合商業施設。食料品が購入できるスーパー、花いちもんめという和食や味一番の中華等バリエーションに富む飲食店街の他に花屋、金魚屋(ペットショップ)、靴屋、大判焼き(今川焼き、回転焼き)の売ってる軽食コーナー、そして当時は比較的どこの施設にも附しているゲームセンターがあった。
あおぞら市場自体は1990年初め頃にCOOP(みやぎ生活協同組合)として建て直され、その後なんでも売ってるリサイクルショップ万代となっているのであおぞら市場の面影は残っていないのだが、あおぞら市場の敷地内、隣にあったパチンコ屋は今もまだその姿を変えず佇んでいる。
そんなあおぞら市場でわたしが経験した出来事はこちらの記事にて簡単に説明させていただいたが、今回ビックリマンワールドを語る上でどうしてそうなったのか経緯をお話する為に今一度そのあおぞら市場での出来事を掘り下げてみる。昭和のゆるーい空気感だから許されたことなので、昭和ってそんな時代だったんだなぁくらいで受け止めていただければ幸いである。
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今は亡きわたしのばあさんは近所でも評判のとんでもばあさん。昔近所のおばさんにうちのお袋が「あんたよくここに嫁いできたね、私なら絶対にあの人のもとには来ないよ」と言われるくらいの悪たれババアで武勇伝は別な記事に書いてあるから興味のある方はそちらを見ていただくとして、そんなばあさんに連れられて物心付く前から、というか赤ん坊でまだおんぶされたままパチンコ屋に出入りしていたのです。
まぁ、正直昭和50年代なんて建前上18歳未満の入店禁止は謳っていたけど、かなり昔の記憶…3,4歳位の頃パチ屋で遊技台から落下したパチンコ球拾いをしている子どもを見かけた記憶が薄らぼんやりあるので珍しいことでも無かったのであろう。
が、しかし昭和60年代~平成初期の頃にもなると真面目なパチ屋ではやんわりとパンチパーマで屈強な見た目のおじさん店員がニコニコしながら「すみません子供の入店はご遠慮させていただいてます~最近(警察が)厳しいんで~」なんて言ってくるようになった。と、いうかじいさんとばあさんがそんな事を言われていた記憶がわたしにはあったりする。
おそらくじいさんとばあさんがそのパチ屋の常連だったからニコニコしながらやんわりと入店拒否をされただけで、一見さんだったら「大魔神怒る」のような、それはもう般若の形相で叩き出していたんじゃないですかね。昭和のパチンコ屋ですから。
こんな感じ?
で、その注意された一件があってから聖域しまむらの記事でも書いたように、じいさんとばあさんが買い物ついでにパチンコ屋に入る前、わたしは数100円程の小銭を渡されてこれで暇をつぶしてろ!って言われてあおぞら市場のゲームコーナーに置いていかるようになったのである。
あおぞら市場のゲームセンターはラインナップが割と豊富で、ナムコのポールポジション(のちにコナミのKonami RF2 Red Fighterに中身を入れ替えられて悲しかった思い出)を始めとした大きな筐体の体感ゲーム、新旧バラエティに富んだテーブル筐体ゲームの数々、そして青いアップライト型のコナミから出ていた国盗り合戦なんて東京都板橋区にある駄菓子屋ゲーム博物館で展示されているメダルゲーム辺りが設置されていた。
しかしながら、アーケードゲームって今も昔もどれだけ短時間でゲームを終わらせてゲーセンが儲かるかってのが大事…所謂「インカムが良い」台が優秀だしお店もそういうゲームを優先して設置したがるのでラインナップが豊富だからといって無闇矢鱈にやりたいゲームで遊ぶとあっという間に数百円なんか消えてしまう。
小銭が尽きてゲームが終わってもパチ屋に子どもは入っちゃだめだ!とばあさんに言われていたので、迎えが来るまでなんとか暇をつぶさなければならない。そうするとわたしはどうしていたかと言うと、ゲームセンター隣の金魚屋(ペットショップ)で延々と金魚を眺めていたのである。
お迎えが早いときは小一時間ほどでやってきたが、フィーバーすればいつ迎えが来るのかわからない…金魚屋の店員さんも恐らくわたしの状況を察していたのであろう、延々と金魚を眺めているわたしに注意するわけでも話しかけるわけでもなく、ただただ遠くから見守ってくれていた。出目金は結構かわいいという事と、らんちうって頭がボコボコで恐ろしい見た目をしてるとこの金魚屋で学んだ。
月に2回位はそんなじいさんばあさんに付き合ってあおぞら市場に置いていかれていたわたしも、速攻で数百円を失い金魚を眺める虚しい思いをいい加減したくないと考え、子どもながらに知恵を絞る。そこで出た答えがうまいお兄さんのゲームを眺めて研究する、だった。
あおぞら市場のゲームセンターは割と流行っていたからか平日昼間から結構お兄さんたちがいた。そんなお兄さんたちがどんなゲームをプレイしているのか、そしてわたしもできそうだなと思うゲームを探し、研究した。当時のゲームセンターはテーブル筐体の画面を他人にゲーム画面を見せないような「コ」の字型の囲いが用意されていて、他人に自分の研究結果を見せたくないとする輩が多かったのだけれども、わたしが子どもだったからかそんな囲いをしながら遊んでいるお兄さんもわたしに気づくとわざわざ囲いを外してくれたりした。
現在アマゾンで3000円くらいで売っているこういう囲いが当時はテーブル筐体の上にちょくちょく設置されていた。
そんなお兄さん達の協力もあって昭和でガラの悪いゲームセンターなのに特に怖い思いをすること無くじっくりとゲームの研究ができたわたしが導き出した答えが、
セガのファンタジーゾーンと、
セガのワンダーボーイモンスターランド、この2つをうまく遊べるようにしようと考えた。
この2つは先駆者であるお兄さん達がプレイしているのを見ているととにかくプレイ時間が長い。ファンタジーゾーンは8面構成の横スクロールシューティングゲームなのだが、8面までオールクリアするとまた1面から始まる「2周目」がスタートする。オールクリアまで10分弱くらいだけど上手い人だと敵の攻撃が激しくなる2周目、3周目以降もクリアできて1時間くらい100円で遊べる「すごくインカムの悪い」ゲームだった。
対して横スクロールアクションゲームであるワンダーボーイモンスターランドはクリア後に2周目が始まることはなかったけど同じ場所に留まって時間稼ぎをする「永久パターン防止」の措置が他のゲームに比べて緩く、だらだら遊ぶことで100円で30分は遊ぶことができた上にとある裏技(後述)があったのですごい簡単なゲームだった。
ファンタジーゾーンは事故死みたいなことがあったけどツボにはまれば永遠と遊べる、ワンダーボーイモンスターランドは事故死は少なめで30分は優に遊べる。この2作品のおかげで次第にわたしは金魚屋(ペットショップ)へ足を運び入れる時間が少なくなっていき、最終的には他のゲームで遊んでもお迎えまで完走できるようになったのである。
この2つのゲームは以前の記事で紹介した通り今でも楽々とクリアできるのはそんな思い出があったからで、Nintendo Switchに移植されているから時折遊んだりしているのだけれども、そんな金魚少年だったわたしの攻略の精度にブーストを掛けてくれたのが、大変前置きが長くなってしまったのだけれどもこちらの、
ビックリマンワールドだったわけです。
ビックリマンワールドは、1987年10月30日に日本のハドソンから発売されたPCエンジンというゲームハード用のアクションロールプレイングゲーム。当時大人気だったビックリマンチョコのテレビアニメ「ビックリマン」を題材としており、主人公のヘッドロココがスーパーゼウスに命じられた始祖ジュラ退治のために旅立つ内容。チョコのおまけのシールで言うとヘッドロココが出てきた第9弾くらいまでのお話となっている。
本作はウエストンが開発、セガからアーケードゲームとして同年8月に稼働されたワンダーボーイモンスターランドをハドソンがPCエンジンに移植する際にキャラクターをビックリマンに登場するキャラクターに置き換えて制作された。この、アーケードゲームのキャラを置き換えてリリースって最近はとんと見かけないけど80年代は結構あったんですよね。
それこそ元祖ワンダーボーイも「高橋名人の冒険島」としてファミコンに移植されたり、有名所だとファミコンの「うる星やつら」はアーケードの「モモコ120%」のキャラ置き換え移植だし、モンスターランドはビックリマンの他にもジャレコから「西遊記ワールド」という西遊記にキャラを置き換えたゲームがファミコンで出ていたりもします。
で、上記の通りなのだけれど、驚くのはビックリマンワールドの発売日。ワンダーボーイモンスターランドがゲームセンターで稼働開始されたわずか3ヶ月後に、しかも当時一部の高額なパソコン以外では難しかったほぼ完璧なアーケードゲームの移植をPCエンジンで遣って退けるその出来に心を打たれ親に懇願してPCエンジンごと買ってもらった思い出。
アーケードからファミコンへの移植は多々あったけど、ファミコンというマシンの限界はやっぱりあってどうしてもアーケードそのままとは行かなかったのだけれども、PCエンジンは違った。容量が足りなくてHuカード2枚に別れたR-TYPEや途中の内容が削られたナムコのアーケード移植作品等はあったけど、それでもPCエンジンの登場によってゲームセンターがぐっと近く自宅で体感できるようになったのである。
そんな思い出のビックリマンワールドをPCエンジンDUOが動いたので最近また購入したわけです。で、このパッケージを久々に見てあぁそうだったなぁと思ったのがキャラたち。このイラストだと誰がどう考えてもセンターに居る緑髪の少年…「ヤマト王子」というのですが、確かにアニメでは主人公みたいな扱いだったけど…
なんとこのゲームには登場しない
のですこのイラストで笑。ヘッドロココがスーパーゼウスに命じられて始祖ジュラを倒しに行くという内容なのですが、スーパーゼウスは左上にいる爺さんだけど、じゃあヘッドロココはどこにいるのかと言うと…
これ…なんだけど…
ヘッドロココに変身前の聖フェニックス
なんですよね笑。つまりゲームパッケージに主人公がいないというとんでも使用…と、いうかこのパッケージにいるキャラは他に右上のいかにも悪そうな青いやつ「スーパーデビル」とその上にちっこく書かれているサタンマリアしか出てこないという笑。これ、わたしのようにアーケードのワンダーボーイモンスターランド目当てで購入した人は別に気にならないだろうけど、純粋にビックリマンが好きでビックリマン目的で買ったキッズは当時拍子抜けしたでしょうね、ぜーんぜん味方キャラが出てこないもんなぁ…
で、内容は散々書いたとおりなのですが、
ワンダーボーイモンスターランド
ビックリマンワールド
と、見ての通りほぼ一緒。細かいところで違うのは、
・キャラがビックリマンに差し替え。ボスもビックリマンのキャラになっている。
・容量の関係で8面のボス「ゴブリン」が差し替えられている。最終面のゴブリンも差し替え。
・BGMがアーケードより2音半低い。アーケードとPCエンジンの同時開発だったのだけれども、音を鳴らしている環境が違うからそうなったとかなんとか。
そして、
・レバガチャ金策が不可
これが一番の違いと言っても過言ではないのです。レバガチャ金策とはワンダーボーイモンスターランドってある一定の場所でジャンプするとお金が湧き出てくるんだけど、湧き出る瞬間にレバー(十字キー)を左右にガチャガチャすると普段より遥かに多くお金が貰えるんですよ。お金を稼いで装備を揃えていくというゲームの特性上、金があればあるほど楽にゲームが進めるのです。アーケードでみんなプレイ時間が長かったのはこのレバガチャによる金策があったからと言っても過言ではないのですよ、お金があればライフも回復できるし。
レバガチャ金策がないので当然ワンダーボーイモンスターランドよりビックリマンワールドの方が難易度が高い…のですが、逆に言えばビックリマンワールドがクリアできればワンダーボーイモンスターランドは楽ちんにクリアできる…そう考えたおよ少年は日々ビックリマンワールドで精進を重ね、ゲームセンターでもさくっとクリアできるようになったのでした。
と、言うわけで早速手に入れたんだから遊んだのですが、散々遊んだしワンダーボーイモンスターランドも遊んでいるから…
あっさり最後のボスまでたどり着きました笑。これがラスボス「始祖ジュラ」で、ルビーという始祖ジュラを弱らせるアイテムがあるので5発殴れば倒せます。順番通り人にあっていくと最後に最終面の迷路の道を教えてくれるベルかルビーのどちらかが貰えるけど道が分かる人はベルを選ばないかなぁ。
で、倒すと…
ジュラがしょうたいをあらわした。と、ブラックゼウスが出てきます。なんで始祖ジュラがブラックゼウスになるのかと言うと、その昔全世界の王になろうとして聖神ナディアが生み出した双子の赤ん坊の1人、ブラックゼウスを体内に取り込んだからなんです。紆余曲折あり双子の片割れスーパーゼウスによって始祖ジュラは撃破されピラミッドに封印されていたのだけれどもなんかの拍子に復活。
その後パッケージにいるけどこのゲームには登場しない復活6天使の6聖卵爆撃を受けて始祖ジュラは消滅、したら中からブラックゼウスがでてきた!みたいな話だったはず。
ちなみに始祖ジュラ、ブラックゼウス共にビックリマンチョコの第6弾のシールなので第9弾のヘッドロココが金で買った装備を身にまとい単身でやっつけるこのビックリマンワールドってビックリマン好きからしたらとんでもねえストーリーな訳だけど、ワンダーボーイモンスターランド好きには関係ない笑
始祖ジュラ、ブラックゼウス共に顔面が弱点なのだけれども、ワンダーボーイモンスターランドのラスボス「ドラゴン」より当たり判定がでかいのでゴリゴリ突っ込んでやっつけることが出来ます。ここだけはワンダーボーイモンスターランドより簡単かな。で、無事にブラックゼウスを撃破すると…
おしまい笑
昔のゲームらしいシンプルなエンディングだけど、さらばじゃ!の後に画面は真っ黒だけどちゃんとアーケードのスタッフロールで流れたエンディング曲が流れます。ワンダーボーイモンスターランドだとラスボスのドラゴンが実は〇〇〇〇で意味ありげにフフフフなんて言う黒い影の存在を匂わせてスタッフロールになります。このラスボスとのやり取りが続編の「モンスターワールドⅡドラゴンの罠」につながるんだけど…わたしはやっぱり最初のワンダーボーイモンスターランドのが好きかなぁ…
と、言うわけでわたしを金魚屋の前でぼーっと佇むのを救ってくれたワンダーボーイモンスターランドとビックリマンワールドのお話でした。版権の関係上ワンダーボーイモンスターランドは今でも最新のハードで遊ぶことができるけど、ビックリマンワールドがPCエンジン以外の機種に移植されることはほぼなさそうなので、気になる方やワンダーボーイモンスターランドが好きな方はぜひ手に入れて遊んでみて下さい。ビックリマンワールドはビックリマンワールドで完成されていますので笑
ちなみにそんなあおぞら市場のゲームコーナーにはとある出来事があっていけなくなったのですが、そのお話はリンク先に掲載していますので気になる方は覗いてみて下さいな。
あと、最近そんなワンダーボーイモンスターランドの続編「モンスターワールドIV」のリメイク作品がNintendo Switchやプレステ4で遊べますので合わせてこちらも気になった方はチェックしてみて下さい。
Nintendo Switch版
プレステ4版