ヒョロっと段取り

昔から大工さんの世界では「段取り8割・腕2割」と言われていて、仕事にかかるための準備が大事なんだよって意味なのです。こんなヘンテコリンな記事ばっかり書いているわたしが言うのも何ですが、やっぱり段取りってのは何をするにも大事なんですよ。大工さんの言う通り仕事は当然、試験だって勉強しなきゃ何も解らないで終わるでしょうし、デートだって行くべき所を調べておかないとグダグダになってしまいますから。

と、言うわけでそんな段取りが大事だよって昔話。たけさんが上席だった頃の会社の出来事で、たけさんが定年退職後に現れた豚汁王子ことヒョロも登場しますので、ご存じない方はまずはそちらの記事をご覧下さい。

 

AB型男はマメだけど雑

あの子は可愛い豚汁娘

 

とある、夕方のお話。

わたしが務める会社の違う部署からお願いの電話があった…相手はひょろりとした長身の野郎なので、以下ヒョロで話を進める。以前の記事に書いたが、ヒョロの方にわたしの手伝いをしてもらうことがあったけど、ヒョロからわたしにお願いをされるのは初めてのことだった。

で、なにをお願いされるの?と聞くとヒョロが、「急ですいませんが明日1日、時間を開けられないですか?」とか言う。

 

急すぎるだろ

 

当時、割と時間の融通がきく営業マンだったけど、さすがに前日の夕方に言われて翌日一日空けられるようなお仕事はしていないよわたし!と、言うことで無理だよって言うとヒョロがこう話を続ける。

 

いやぁおよさんじゃないとダメなんすよ~トラック使わなきゃいけなさそうなんで…

 

トラック…室内園芸装飾のお仕事では結構な大物を運ぶことがあるのでトラックが会社にあったのですが、当時このトラックを運転できる人がわたしともう一人くらいしかいませんでした。免許的にできないのではなくて、みんなトラックは大きくて運転するのが怖いと言ってワゴン車を好んで使っていましたね。

 

で、わたしとトラックを使って一体何をするのかね?とヒョロに聞くと、

 

あ、何かモミの木をお庭に植えにいくらしいですよ!と、超他人行儀な感じで話す。

 

 

うちは造園屋じゃないんだから断れ

 

 

いや、わたしが別にやりたいとかやりたくないとか以前の問題で、餅は餅屋じゃないですかやっぱり。ヒョロは花屋だしわたしは室内園芸装飾がメインのお仕事、ちょっとしたお庭のガーデニングなら解るけど木をガチンコで植えるならやっぱりその道のプロである造園屋さんに頼んだほうがいいよ。

 

と、言うとヒョロは、僕もそう思うんですけど…いやこの案件、オーナーが受けてきちゃいまして…

…オーナーかぁ。最近は隠居生活をしている…と思いきやたまにふらっと会社にやってきてこんな感じの無茶振りをするそうです。断るとそりゃあもう恐ろしい目に合うとかなんとか…わたしは経験が無いですが。

 

うーん、オーナーが言ったのは解ったけど、さすがにわたしはそんな暇じゃないんだが…と言うと、ヒョロのとどめの一撃。

 

で、オーナーにきっと普通の車じゃ運べないからおよ君にお願いしてトラックで行きなさいって言われたんすよ!

 

 

 

おしめぇだ笑

 

オーナーにご指名とあらば、それはもう断れない訳でして。わたしだってそんなおっかない目に会いたくないもの…

って事で予定をシフトさせ、休日出勤をすることに…まぁ移せる予定は移すけど、どうしても明日の16時打ち合わせっていうのはずらせないのでその時間に間に合うようには帰ってくるからね、とヒョロに言うと、ありがとうございます。と言ってきた。で、明日はどうすればいいの?と聞くと、

 

・朝、トラックでモミの木を取りに行く。

・山奥の別荘地に持って行く。

・植える。

 

これで終わりですから16時にはちゃんと帰れますよーとヒョロ。そっか、まぁその程度ならいいか。

 

 

それで、次の日の朝。

 

朝7時にヒョロと待ち合わせ。植えるだけだからソレで十分ですよというヒョロを信じてトラックにスコップだけ積み込み、指定された場所でモミの木を取りに来て立ちつくす男二人。

 

…大きい。予想よりかなり大きい。高さは2.5mといった所か。上より目立つのが下の根っこ。麻袋?のようなもので梱包され丸くなっているのにめちゃくちゃ大きい根っこ…そりゃ上に伸びてりゃ下もそれなりに大きい訳で…ちょっと持ってみようとするヒョロ。

 

無理…

 

そう言ってすぐ手を離すヒョロ。わたしもちょっと担いでみようとするも…これ、100キロはあるよな…うーん。

 

まぁ、悩んでいても仕方がないので、二人で火事場のクソ力を発動しトラックに無事収納。意外と持てるもんですな。でも、慣れないモノを担ぐ時って変に重く感じるんだよなぁ…

 

で、トラックは目的地を目指して山奥へ。道中どうしてこう言う仕事を受けたのか、どこにモミの木を植えるのか、そんな経緯をヒョロに聞いてみる。

 

あ、何か~オーナーの奥様の友達のおうちらしいです。で、お花が大好きなセレブが別荘に素敵なお庭を作りたくて、でもこんな大きいの一人で植えられないから困っているってオーナーの奥様とセレブがお話をしていた時に、オーナーがうちでやってやるから、みたいなお話になったようで…で、たまたま僕が近くにいたので仕事をふられたんです。

 

…できるかどうか解らないお仕事を受けても誰も幸せになれないと思うんですが…まぁ受けてしまったらそれはもう仕方ないしヒョロも可哀想な子だ。ただ近くにいただけでこんな目に…ってさらにとばっちりを受けてるのはわたしだけども…

で、そのセレブな方ってのが、割とみんな知っている会社の社長夫人の様でして。へーそんな人と付き合いがあるんですね、うちのオーナーも。って思いました。

 

そんな話をしていたら、山奥の別荘に到着。時刻はジャスト10時。周りの景色は森林に囲まれて静かな空間の中にポツリと別荘がある感じでした。

全く人気のない、とても静かな場所…確かに別荘としてはいいでしょうが、もう5月っていう時期なのに路肩には雪が残っているのでも解るくらい結構寒い。

 

別荘のピンポンを鳴らすと、品のいいセレブな貴婦人が出てくる。寒いのにわざわざありがとうね!なんて言いながら中に通され、お茶を出された。断るのも失礼なので頂く事に。

 

で、お茶をすすりながら別荘の外を見てみる。窓から見える景色が…

この別荘、こんな感じの作りで裏が膨大な雑木林であり、道路と庭の登り切った場所とでは高さがかなり違う。10m位あるんじゃないのかってくらい結構な勾配だ。それで貴婦人に、モミの木はどこに植えるのをご希望されますかって聞いたら、

 

 

一番てっぺんですか笑

 

ちょっとこうしちゃいられない。あんな巨大なモミの木をてっぺんまで運ぶなんて時間がどれくらいかかるか解らない…悠長にお茶なんかすすってられない…ヒョロ、さぁ始めるかと言った時、貴婦人がこう一言付け足した。

 

あ、そうそう、オーナーさんには言っていたんだけど、庭の真ん中当たりにドウダンツツジが8本あるから、それも一緒に植えて下さいね!

 

聞いてない笑

 

て、事は何ですか、全部で9本も植えなきゃいけないんですか、造園屋さんじゃないわたしとヒョロで…なんでそんな大事な事をオーナーは伝えてくれないのだ笑

 

って、所でヒョロがこう一言。

 

あ、そういや貴婦人さんちにあるちょっとした植木も一緒に植えてあげてね、なんてオーナーが言われてましたわ。なんて言う。そっか、伝達不足はこやつのせいか…

 

で、ちょっとした植木と言われていたドウダンツツジを庭に出て確認。うん、

 

 

どれもこれも2mくらいあるんですが

 

これをちょっとした植木と言うならどれがちょっとしてない植木なんだろう…

 

もうね、受けていた話は実行するしかないですから。さっさと終わらせないと16時の打ち合わせに間に合いませんから…ああああああああっ!と、車からスコップを持ちだして掘り始める男二人。

 

ところで、貴婦人さんからはお庭はちゃんと抜根してあるからそんなに穴を掘るのは苦労はしないと思いますって言われていたんです。しかし、わたしから見たらどうみても雑木林…いつ抜根されたんですか?と聞いたら、5年前との事。ええ、そうでしょうね、

 

どこを掘っても根っこばっかり出てくるんですが…

 

掘ると言うよりは、スコップで根を切る作業…もくもくと…根っこを男二人で抜根抜根…

 

で、時間がないと9本分の穴をガンガン掘ったり、モミの木をファイト1発リポビタンDよろしく斜面をズリズリと引きずり上げたり、いやぁぁぁと恐怖におののく少女のような声をヒョロが出したりしていたら、

 

 

午前中に終わった笑

 

 

わたしは当時腰痛がひどかったのですが、その腰の健康という代償と引き替えに、意外とあっさり作業は終了した。と、言うわけで山奥が珍しかったから帰りがてらその辺の観光をしつつ、ヒョロといやぁしかし全然話聞いてない事ばかりで焦ったよねぇ、あんな雑木林に穴を掘るならマトックとか道具あっても良かったよねぇ…そしたらもっと簡単に穴が掘れたのにってわたしが言うと、ヒョロが、

 

 

 

あ、でもそう言えばそんなことオーナーが言ってましたわ

 

 

 

諸悪の根元はヒョロか笑

 

 

そもそも、オーナーは最初からヒョロに仕事内容を全部言っているんですよね、それで体力だけはありそうなわたしと一緒に行けなんて言ったんでしょうから。

で、ヒョロはめんどくせーなーと思ったのかどうかはわからないけど、現場で何をするのかを詳しく聞かなかったり、どんな場所に木を植えるのか解っていながらわたしに言わなかったりって…あなたちょっとそれはまずいよ、仕事なんだから段取りは大事よ、そうすればある程度時間どれくらいかかるとか、現場で使える道具を揃えて安心安全に作業が行えて、フルパワー出力で少女みたいな悲鳴をあげなくてもいいんだからさ…モミの木をひきずり上げるのだってロープ一本あったらぜんぜん違うよってってお話をしましたねさすがに。

 

と、言うわけで帰りに無駄な労力の代償としてヒョロにラーメンを奢らせて帰路についたのでした。ほんとこう段取りをしないというか伝達不足でヒョロに余計な労力を使わさられることって結構あったんですよねぇ。オーナーも結構厳しい仕事を取ってきたりしましたけど、話だけちゃんと聞いてりゃなんとかなりましたからね。そんなわけでこの事件の後、ヒョロから仕事をふられたらその周りにしっかり確認するようになったおよでした笑

 

今ではヒョロも全然別な仕事をしていますが、ちゃんと段取りやっているかなぁ…わたしはこのモミの木のおかげで腰を壊したので、おかげさまでますます段取りを組むようになりましたわ笑

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