チキントラクターの効果
チキントラクターとは車輪の付いている「移動式鶏小屋」の事を言い、毎日少しずつチキントラクターを移動させることで自然の草刈り機として機能いたします。
畑やお庭など土のある場所は、放置しているとどんどん雑草がのびて草地になっていきます。人間にとっては大変な雑草対策ですがニワトリにとってはまさに草花や昆虫などの餌の宝庫です。
ニワトリを飼育するのに少しの手間(卵を生み続けるには卵を生成する栄養の入った飼料が追加で必要、晴れの日が続いた場合、夏場は給水が必要ですし冬は寒さ対策が必要です)はかかりますが、除草にニワトリを利用することによって薬剤やエネルギー、そして人の労力を使わなくてもいいのがチキントラクターの最大の効果です。
そして、そのチキントラクターの副産物としてニワトリが自然のものを食して作られた、自然がたっぷり詰まった新鮮な卵を生み、そのニワトリのフンには窒素・リン酸・カリウムが豊富に含まれていて、鶏糞により土の栄養素が豊かになります。
そんなチキントラクターをご利用いただいた畑で、本日からチキントラクターが可動するということだったので一緒に観察させていただきました。当記事はそんなチキントラクターの効果をまとめたものとなります。
雑草の生い茂ったチキントラクターの効果を見るには好条件の畑。一日に何回もチキントラクターに出向いて観察しところどころ考えさせられることがありました。
まずはチキントラクターの要である除草作業に関して。今回、1,200mm×1,200mmの5羽用チキントラクターにもうすでに卵を産むニワトリを3羽入っています。前日の夜にチキントラクターに入れていたのですが、
午前9時頃の写真。すでに雑草を突っついたような跡はありましたが、まだまだ生えています。
夕方、午後4時頃の写真。あっという間に雑草がなくなりました。チキントラクターの高い除草性能が伺えます。ここまで地面を突っついてくれるなら700mm×700mmくらいの大きさで1羽用チキントラクターでも十分効果が見込めそうです。見てわかる除草効果といい感じに土へフンが合わさっていました。鶏糞の肥料化も見込めます。
しかしながら気づいた問題点もありました。止まり木と2階部分にニワトリが行く様子がありません。しばらく観察していたのですが登らず。ニワトリは臆病で外敵から身を護るために上に上に行く習性があるので、止まり木と2階部分を用意したのですが、暗くなってくると下のスペースで丸くなって寝てしまいました。
調べてみると、外敵に襲われる心配がないといった、そういう危険を感じる習慣がなく育ったニワトリは上に上がったり止まり木に止まったりしないこともあるようです。中に入るニワトリによってはチキントラクターの構造を変える必要がある事がわかりました。ある程度安全な場所で大きくなった種鶏(しゅけい)や親鶏をチキントラクターに入れるときは、スロープと止まり木、2階部分はなくてもいいと思います。
その後、ニワトリが小屋に慣れたら上に登るようになりましたが、品種によってはスロープがきついからか2階部分に登らないことがあったので現在ではスロープを緩やかにした2階部分の「ハーフ巣箱タイプ」を準備しています。
雑草があらかたきれいに片付いたのでチキントラクターを移動させることに。移動できるのが利点ですからね。そこでまた問題を確認。移動用の車輪がついているのですが、雑草の上を走らせるにはベニヤ板とかコンパネとか、平らな板がないとかなり力任せになってしまいます。
底面の網はゆるく貼っているのでニワトリが足を挟めることはありませんでしたが、除草目的である以上雑草の多いところにチキントラクターを移動したい、でも雑草が深いと車輪がうまく可動しないといった感じです。その後、何台かチキントラクターを設計し弊社では大きめのノンパンクオフロードタイヤを推奨するようにしました。小さい車輪だと畑ではスタックしてしまいますが大きめのタイヤのおかげでスタックはしなくなるようになりました。
今回、チキントラクターを観察させてもらった統括となりますが、チキントラクターの除草効果は人間が手で雑草を抜くより遥かに簡単かつ楽に行えました。お客様ニーズをよくお伺いしてその方の畑に見合ったチキントラクターを作るのが大事と改めて気付かされ、それと同時に汎用的な(量産的な)システムを構築して比較的安価にチキントラクターを提供できる企業努力も必須と感じました。
簡易的で低コストなものはすぐできますが獣害にあいやすいチキントラクターでそれは不安がありますし、高コストで人の住居のようなチキントラクターも作れるには作れるけど、重くなると動かすのがしんどくなるんですよね。高度なギミックで動くチキントラクターもいくつか試作してみましたが、仕掛けが凝れば凝るほど移動させるのがめんどくさくなってしまうんですよ。よほどニワトリが好きで毎日畑に行けて細かい人ならいいかもしれませんが、弊社のチキントラクターは「楽さ」も考えていますので高度かつ複雑なギミックを仕様にすることは控えました。
こうしたデータを集合してバランス良くチキントラクターを再設計し、現在弊社ではどなたでも楽に扱えるステンレス棒ギミックを搭載し、コストを抑えた上に頑丈なバージョン2への販売となりました。
生き物を育てるのでどうしても手間のかかる部分はありますが、自然のエネルギーで除草ができるエコロジー的素晴らしさと、その副産物で生まれる新鮮な卵は何とも言い難い格別の味がします(定期的にニワトリに卵を産ませたい場合カルシウムを含んだ餌を与える必要があります)。もちろんチキントラクターを置くための土地や畑が必要となりますが、ライフスタイルのワンポイントにすると生を実感できる素晴らしい小屋だと実感しています。
そんなチキントラクターのスペック(現在販売されているのはバージョン2に更に改良を加えたバージョン2.1とオーダーメイドです)は下記の記事で紹介されていますのでそちらも合わせてご覧下さい。
草が生えない時期のニワトリのせわは、どうするんですか?
ご質問ありがとうございます。
草が生えている時期、生えてない時期に関わらずニワトリが卵を産むために必要なカルシウム等は草からでは供給が足りないので多くの方はカルシウムを含んだ飼料をニワトリに与えています。また、夏場の給水は必要ですが冬場も水が凍らないように気をつけています。
ニワトリ自体寒さには強いのですが、チキントラクターはかなり風通しのいい鶏小屋ですので、お住まいの地域にもよりますが冬場は風の当たらない場所に移動したり、布を巻いたり、板を置いたりして寒くなりすぎないように対策を取る必要があります。冬場でもほとんど氷点下にならない地域であればそこまでしなくても問題ないのですが、若くないニワトリの場合は寒さに気をつける必要があります。
以上、よろしくお願いします。