親父の一番長い日
わたしの昔の会社の上席であるたけさんは結構な営業マンだったけど、企画を練ってプレゼンするのもすごい能力の高い人だった。
例えば、お正月にお店や会社の前に飾る門松。あれってお正月に飾ったら一部をどんと祭で焼いて後は廃棄物になっちゃっていたんだけど、たけさんのアイディアで門松の竹を焼いて竹炭にしてネットに入れ、縁起物の竹炭でお風呂の水を濾過しよう!なんて商品を作った時は結構売れました。というかたけさんがバンバンさばいてましたね。実演販売もすぐにできる人ですたけさんは笑
そんなたけさんの企画で、緑のブライダル装飾がありました。通常ブライダル装飾って当然生花がウリだけど、ダークブラウンを貴重として落ち着いた感じの結婚式なら植物メインでのブライダル装飾も変じゃないよね?って事でそんなプレゼンをいつの間にかどこかの結婚式場にしていて、あれよあれよとその結婚式場のプランに食い込んでいたという。
ブライダルフェアといってサンプル装飾を休日に行うおかげで貴重な休日が何回か無くなり、さらに結構ウケがよかったからかブライダル装飾のお仕事も無事に決まって更に貴重な休日が無くなったりしました笑。
まぁ、仕事だから仕方ないけど普通休日出勤したらどこかで代休ってあると思うんですが、そんなの取る余裕がない会社でしたね。たけさんが会社を定年退職した後わたしもこの会社をやめたのですが、やめる時にきっちり有給休暇40日使い切りましたけども笑。
と、言うわけで本日はそのたけさんの緑のブライダル装飾のお話。例によってたけさんって誰?という方はまずは下記の記事をご覧下さい。
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いつぞやの話。たけさんの娘さん、二人姉妹の長女が結婚式を挙げることになりました。娘のブライダル装飾は俺がやる!と半ば無理くり娘の結婚式を付き合いのある式場に決めて仕事を取ってきたたけさんに手を貸し、緑のブライダル装飾をしに行ったのです。
緑を飾っている途中であいつ(婿殿)におとうさんなんて呼ばれたくねぇ、とか、あっちの親父は何にもしねぇ、とか誰に言うでもなく一人悪態をついていたたけさん…まぁ愛娘が嫁にいくんだから何かしら文句は言いたいんだろうなぁなんてそん時は思っていました。
だが、そんなわたしの想像を遙かに越える、娘を思う気持ちをたけさんは心に抱いていたらしい…
緑のブライダル装飾は何回かお手伝いしたことがあったのでさくさくっと無事に終了。わたしは一旦会社に引き上げ、たけさんは着替えてそのまま結婚式に参加するようだ。
それで、結婚式が終わり緑のブライダル装飾を片付けに行った時の話。
極端にせっかちなたけさんをカリカリさせない為に引き上げの時は結婚式終了時間より大分早く会場に着く。メガネの会場のおねえさんにまだ終わってませんよ、なんて言われたのでバックヤードで待つ事に。
ブライダルのお仕事は次に結婚式を行うカップルが控えていたりしてすぐ引き上げ作業を行わなければならないから複数人で待機。そうこうしていると、式場から一斉に人が出てきた。あぁ結婚式が終わったのか、さて片づけかなぁなんて思っていたら、その人ごみの中にたけさんの次女がいた。
たけさんの次女とはわたしも面識があったので、「あ、この度はおめでとうごさいます」なんて挨拶をする。すると、
あぁ、全く最悪でしたよ。
なんて、とっても不機嫌な感じの顔をしながらこんな返事が返ってきた。はい?何かしたんですか?と聞いたら案の定たけさんの事だった。
チャペル…披露宴の前に教会みたいな所で色々やるじゃないですか結婚式って。そこでの出来事。
バージンロードで娘の引き渡しを済まし最前列に座るたけさんと奥さん。その隣に座る次女。式は進むとお決まりの、
長女さん、あなたは○○を一生愛し付いてくことを誓いますか~?
なんておきまりの台詞を吐く牧師さん。そこで、はい誓いますと答える長女。
その途端思いっきり首を傾げるたけさん。はっきりと周りに見える様に…ちょっとざわつくオーディエンス。
で、さらに進む式。よもやクライマックス的な、では、お二人の誓いのキスをーなんて言う牧師さん。で、当然キスをする新郎と長女、まさに結婚式の頂点、オーディエンス一同が盛り上がるぞっ!写真撮るぞ!!って空気の時、
たけさん「チッ」
まさかの舌打ち!更に会場の隅々にまで聞きわたるくらいの大音量!新婦の父の舌打ちのおかげていまいちこうぱっと盛り上がれず不完全燃焼の参列者たち…
…
ほんとまじで最悪だったっすよあの親父!
そう力説する次女の話にうわーそりゃひどいですねえと相槌を打っていると、たけさんもわたしに気づいたからか、こちらの方にやってきた。にやにやしながらわたしにこう一言。
俺、泣かなかったからなっ!
いやいやたけさんそんなのは問題じゃない。あなたの為の結婚式じゃないのに、そもそも長女さんをお嫁にやるのを了承したからの結婚式でしょ、子供みたいなことしてないの!
と、いう台詞をごく丁寧に言ったら、後片づけよろしくね~と消えるたけさん。たけさん、仕事を定年退職してボケたりしたら婿殿に反逆のいじめ食らうだろうな…てか、みたことないけどえらいよ婿殿…こんなたけさんの肩を持つんだから。わたしがこんな事結婚式でやられたらそりゃ不機嫌になるだろうなぁ…
その後、たけさんはしばらーーーく娘の結婚式では泣かなかった!って聞かれてもいないのにお客さんとかに言ってましたね。まぁ、そのくらい娘さんのこと好きなんでしょうねぇ笑。そして、たけさんがやめたと共にこの珍しい緑のブライダル装飾をうちが行うことはなくなりました。どこかの花屋さんでも引き継いだのかな。
ちなみに結婚式でこんな事を親父にされた当の本人たちである長女さんと婿さんは今でも仲良くやっています。と、いうか婿さんはたけさんと結婚後ずーっと同居しているんですよね。こんな結婚式で舌打ちする親父と同居できるってことは婿さんは相当ウワテなんだろうなぁ笑
そんなわけで、やっぱり子供の結婚式で悪態はついちゃだめだよなぁと悟ったおよでした笑。
家にかこってボケるまで手ぐすね引いて待ってるのかもwそれなら正真正銘の上手ww
いやたぶんそんな感じだよこの婿さん。このくらいしたたかな人間だだったらわたしもちょっと違う人生を歩んでいただろうなーとは思う笑
まぁ素直になんでも顔に出てしまうのは長所ってことで笑