とにかく飛んだ土日

とても昔の話。

 

バイト先の社員さんから突然のお電話。出ると、

およちゃん、今度の土日って空いている?と、言われる。

何でですか?と返すと、

一日12000円あげるから、急で悪いんだけどお仕事しない?と、言われる。

 

悪い予感が…この社員さん、よくわたしに無茶を要求してきたのだ。例えば、36時間みっちり連続で働かせたり、突然青森まで拉致されて3日間おうちに帰れなかったり…今回も何かしらデンジャーな匂いがする…だって当時うちのような片田舎では日給12000円の仕事なんて滅多にお目にかかれなかったのだ。恐る恐る、一体どんな仕事なんですか…?と、聞いてみると…

 

 

時はおよ20歳前後、大学生。バイトは学生の時は一貫してイベント会場を作ったりするディスプレイの仕事をしていた。当時としては割がとても良い事と、肉体労働なので身体が作れる、それだけの理由だが接客という面倒事がほぼない仕事だったので自分には合っていたのだろう。

 

それに、現場は毎回当然違う場所で、作るモノも違う、時にはバイトの分際で出張に出たりととにかく代わり映えがして飽きの来ない仕事だった。だが、たまに現場でガツンと働くのかと思いきや、スーツを着てこいとか言われてクライアントの接客をしたり、スタッフジャンパーを着せられてお客様の誘導係をしたりと、肉体労働とはかけ離れたお仕事が希に…この社員さんからの指令で行う事があった。

 

それで時はうわさの土曜日。

うちからバイクを走らせる事30分、上記の、日給12000円の現場に到着。現地には、クライアントのマネージャーみたいなおじさんとその手下らしき人、そしてイベントコンパニオンな感じの女の人がすでに到着していた。

 

およさんですか?

 

おじさんに話しかけられる。あ、はい。今日明日宜しくお願いします、とわたし。

 

うん、じゃあ早速コチラに着替えて下さい、と渡されたのは、

 

 

ウサギの着ぐるみ

 

はい、と答え更衣室に通されるわたし…よいのか、わたしはキャラじゃないんだがこういう仕事は…なんて自問自答をしても仕方がない、ビジネスとして受けてしまったのだ。さっさとウサギの着ぐるみを装着して、特設ブース…建物入り口そばに、長机と、ボンベと、簡易なポップ(看板)、そんな簡単なブースでしたね。で、とりあえず封の切られていない大量の風船をおじさんに手渡されたんです。

 

このボンベの、上のここをこうして…ほら、膨らむから、こうやって風船を作っていて下さい。と手下に説明を受ける。はい、とわたし。

 

コンパニオンのおねえさんも風船作りにかかる。結構美人だが、メガネじゃないので興味なし。今も昔もわたしは最低でも丸顔で、できればメガネじゃないとかわいいと思えない病気なのである。そんな事を思いながら開店時間前に黙々と風船を作り、風船をストックするおじさん、手下、コンパニオン、うさぎのわたしの四人。

 

さてさて、日給12000円のお仕事。ウサギの着ぐるみを着て、風船配りなのはここまでで解るかと思うが、ここが一体何処かというのが問題だ。ここは…

 

開店。一斉にベビーカーをひきながら入店してくる家族連れ。さささっと風船を渡し出すうさぎのわたし。

 

ええ、今回の現場はマタニティ・チャイルド・ベビー用品を扱うチェーン店。

 

アカ○ャンホンポさん

 

でした笑。

 

 

話は社員さんの電話に戻る。

えええ!アカ○ャンホンポさんで着ぐるみを着て風船配り笑。いやいやいやわたしそういうの苦手っすよ!と、社員さんに断りを入れたら泣きつかれたわたし。そういう接客がしたくないから肉体労働を選んでいたのに…これなら過酷な肉体労働の方がよっぽどマシ、うん、絶対マシ!

 

しかし社員さんも食い下がる。頼むよ~急に人が必要になったから何とかしてってクライアントに言われてるんだよ~およちゃんしか頼めないんだよ~なんて言う。

…いや、でも…ちょっt

 

断ったら、もううちではバイト入れないから。

 

 

話は土曜日に戻る。

畜生!職権乱用じゃないか…確かにわたしは土日暇だったけど、こういうきらびやかな家族連れにうさぎのきぐるみを着て風船を渡すなんて仕事が向いてないのは就職自己診断で明かなんだよ!とか考えながら、黙々と、はいどうぞーと入ってくる子供達に風船を配るわたし。

 

でもまぁ、風船を配るだけだし、きぐるみを来ているのでわたしがとても苦手な作り笑顔も必要ない。要領だけは良いと評判のわたしは、この風船配りにあっという間に慣れてしまう…そうなると、一気に退屈さを感じる…ボンベで風船を膨らませて、ストックして、子供がやってきたら上げて…いつの間にかコンパニオンのおねえさんはマイクパフォーマンスをしている、何かのキャンペーン企画だったみたいだけど特に覚えていない。おじさんはそちらの方で音響の機械をいじったりしている。手下は、うさぎのわたしの後ろでぼけっと座っている。まじで手下は座っているだけ。何もしない。

 

 

おい、手下働け!

 

思わず言いそうになるうさぎ。しかし、うさぎさんには子供の夢が詰まっているので切れてはいけない。子供に風船を渡す重役ですから。キレテナイデスヨ、キレテナイ…

 

一時間ほど経った頃だろうか。ああ、もう飽きたなぁ一服したいなぁって時に、一組の親子が。あのーと、お母様がうさぎのわたしに話しかけてくる。

 

この子、風船手放しちゃって…すいませんが、もう一つ頂けませんか?

 

お母様の目線の先には、確かに天井に引っ付いている風船が見える。うん、風船をあげるのは別に良いんだけど…天井は普通の建物より少し高め、しかし風船には紐がついてるし…風船配るの飽きたし…

 

ちょっと待ってて下さいとわたし。風船の近くまで行き、2,3歩加速をつけてジャンプ。風船の紐に手が届き、キャッチ。はいどうぞ、と子供に手渡してあげた。ありがとうと子供に言われた。垂直跳びならちょっときついかもだけど、助走をつければなんとか紐に届くかな、なんて思っていたら…

 

おじさんが一連の流れを見ていたらしい。で、こう一言。

 

お、およ君、何部だったの?

 

風船配りのお仕事に何の関係があるのだ。まぁ、昔は陸上部でしたけど…と、言うと、

 

うん、いい、良いジャンプだった。所でさ、店内を見渡してみてくれ。と、おじさんがわたしに言う。

言われるがまま店内を見渡すと…あ、天井に結構風船が引っ付いている。なんか嫌な予感…わたしは嫌な予感は結構当たるんだよなぁ…良い予感なんか当たった事ないのに…その様子を見ながらおじさんがこう言った。

 

こうさあ、子供って風船をどうしても離しちゃったりするんだよね、で、さぁ、うちらはお店の入り口を借りてキャンペーンしている訳でさ、風船とか残っているとお店にめいw…

 

つまり、ジャンプして風船を取ればいいんですよね

 

まわりくどい言い方にうんざりして、さっさと会話を進めてしまうわたし。うん、お願い!あと、定期的に巡回してさ、風船離した子供見かけたらすかさずジャンプして取ってくれる?印象いいじゃん、やっぱs

 

ちょっとおじさんの会話がくどそうだったので、途中ではいと返事をして、店内をふらつき出すうさぎさん。そこからうさぎさんは、己の脚力との勝負が始まった。

 

まず、店内の天井にある風船をすべてジャンピングキャッチで回収。このさっと店内を回っただけで20個は捕獲した。次に、店内を巡回していて、子供は風船を手放したら即ジャンプ!キャッチして子供に渡す。またこのウサギがジャンプして風船を捕獲するってのが、子供に受けるみたいでして…終いにはコンパニオンのおねえさんが、風船を手放しちゃったら、ウサギさんに取ってもらいましょうとかマイクで喋りやがったからもう大変…アカ○ャンホンポの従業員さんにまで頼まれる始末…

お昼を回り、やっとこさ休憩。飛びすぎてすでに足が悲鳴を上げている気がする…

 

すごいジャンプですね~

 

一緒に休憩に入ったコンパニオンのおねえさんが感心しているっぽくそう話しかけてきた、が、もう疲れていたわたしは「陸上部でしたから」とだけ答え飯をかっ込む。なんかフラグ折ったのかも…まぁいいやメガネじゃないし。

 

お昼休憩後。午後も、永遠とジャンプして風船掴み。風船を膨らませる役は手下で落ち着いたらしい。とにかく飛びまくって定刻となり土曜日のバイトが終了。足がプルプル言っててバイクに乗りにくかったわよ…

 

 

2日目、日曜日も最初から昨日に引き続き、うさぎのおよさんは風船取りを頼むよってな話に…2日間、飛びっぱなしのわたし。バイト内容が、風船配りが風船掴みになった事などどうでもいい、足が…脚力が子供の放つ風船に追いつかなくなっていく…

 

ひたすら本物のうさぎの様に宙を舞う事数百回…すでに覚えていない、数える気もしない…

 

2日目の夕方、最早ただ立っているだけで足がプルプルと震える状況。そんな状況でも、宙に舞った風船を掴まなきゃいけない。ジャンプして、風船を掴み、子供に渡す。ありがとう、と言われる。さて次へ…と、言う時に、たった今風船を取ってあげた子供から、残酷な台詞が発せられる。

 

ママー!風船が上に行くと、ウサギさんがジャンプして取ってくれて面白いよ!

 

で、

 

まんまとウサギさんの前で風船をわざと離しやがったんです、4歳くらいのガキンチョが!

 

疲労困憊からか、さすがにカチーンときたわたし。うさぎさーん、風船取って~とかやってくるガキ。

 

プライベートならめちゃくちゃ説教!!

 

ものですが、お仕事中にそれをやっては、訴訟問題に発展とか成りかねないですからね。その頃からもうすでに少子高齢化で子供が貴重な時代でしたし。うん、男は黙ってジャンプ…風船をキャッチ、そして子供に風船を渡す時に少し注意しようとしたら…

 

はぁはぁはぁ、だめだょはぁぁはぁ、ふうせんわざとはぁはぁ、はぁなしちゃぁぁはぁはぁはぁ…

 

と、

 

めちゃくちゃに飛びすぎて思いっきりすっかり息が上がっていたんです。で、そんなはぁはぁなうさぎさんの姿を見て、

 

ダッシュで子供の手を引いて逃げるおかあさん

 

違うんだ、違うのだよおかあさん、誤解だ、飛びすぎているもんで息が上がっているだけだ笑

 

と、変態うさぎの噂が流れる前に定刻がきて風船配りのバイトが終了。お疲れ様、がんばったねって皆様に言われて帰路に。ええ、陸上部ですから、とわたしは言いぷるぷるの足で帰宅する。最後の最後、おうちの駐輪場で踏ん張りが効かずバイクで立ちゴケしたのは内緒だ。

 

と、言うわけでうさぎの格好をして風船を配っていたら風船キャッチになってしまったというだけのお話でした笑。わたしほどア○チャンホンポさんでジャンプした人はいないだろう多分笑。

 

 

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