脂坊主

昔、塩竈の料亭で食した魚…刺身だったのだが、白身で脂がとてものっているけど、クドくなくさっぱりしていて、甘みのある魚。今まで食べてきた刺し身とは全く違うその味に驚きつつ、この白身ってなんて言うんですか?と店の人に訪ねたら、

 

「アブラボウズ」

 

との答えが返ってきた。

 

以来わたしはスーパーの魚コーナーなんかでふとそのアブラボウズを思いだし切り身の刺身を眺めるが、その料亭以来出会った事がない。

 

その後、ふと立ち寄ったスーパーでまたそのあぶらぼうずを思い出した。刺身コーナーを覗くと、やはりそのアブラボウズと言う魚は見あたらない。調度、その時若い店員さんが品出しをしていて隣にいたのでアブラボウズってお魚ありますか聞いてみた。すると、

 

「アブラボウズ…いや、知らないっすねぇ、うちにはないっす」

 

と、若い店員さんは地味な見た目とは裏腹な感じのDAIGO口調で予想通りの返答をしてきた。うーん、やっぱりその料亭でわたしが魚の名前を聞き間違えたのかなぁ、なんて思いつつ帰路に着く。そりゃもう一回その料亭に行けば解決しそうなもんだが、野郎一人で行くにはなかなか敷居が高いお店。なお、敷居が高いって本来は行きづらいって意味じゃなくて不義理、不面目なことなどがあって、その人の家に行きにくいという意味で使われる言葉なんですなそういえば。もちろんわたしはその料亭で何かやらかしたわけではないのですが笑

 

そういや、アブラボウズって検索した事がなかったよなぁ、と、ふと思いGoogleさんにてアブラボウズを検索してみた。すると結構なヒット数。適当なページをクリックしてみて、まず出てきた文章が、

 

 

アブラボウズは形がクエに似ているからクエに偽装されて売られていました。

 

そんなぁ…わたしは偽装されるような魚を追い求めていたんかいな…と一瞬落胆する。やや気落ちしながら色々アブラボウズについて調べてみると、アブラボウズは深海魚でカサゴ目ギンダラ科に属する魚類。ギンダラ科2種のうちの1種であり、アブラボウズ属で唯一の種である、と書いてあった。なるほどタラちゃんのお仲間なのか。

 

続けて、東京都伊豆大島の水深約1000mにも生息するとされ、水中深くに生息する為体の約40%が脂肪分であるとされている。なので全身大トロの深海魚とも言われ、アブラボウズ(油坊主・脂坊主)という名前の由来もここからきている。

 

神奈川県の小田原辺りではオシツケという名前で食べられているがその由来がまた面白い。オシツケというのは御殿女中の使った女房言葉で毒見をすることを意味する。このアブラボウズは脂が多いため食中毒(下痢)をすることがあるから、毒見を要する魚の意味でそう呼ぶようになったみたい。天然下剤みたいな魚だなぁ笑。

 

だけど、アブラの名が付く巨大魚なので誤解を受けることが多くありますが、アブラボウズの脂は普通の魚と同じもの。ワックス成分の脂を持つ食用不能魚、バラムツやアブラソコムツと違い、人間にも消化できる食用可能魚です。と、続いていた。バラムツはよく食べた後はオムツをしろなんて言われている魚ですな。それとは違ってきちんと食べられるのかアブラボウズ。

 

そして、偽装されていたクエとの主な違いが、

 

・アブラボウズは高級魚、クエは超高級魚

・アブラボウズは脂ののった濃厚な味、クエは淡泊で味わい深い味

 

味は全然違うけどクエはアブラボウズのおおよそ3~7倍の価格。なので見た目が似てるからと高級魚のアブラボウズを超高級魚のクエに偽装していた、と書いてあった。元々高値のアブラボウズを偽装するのだから偽装業者も罪の意志が低いとかなんとか…

 

おいおいなかなかグレートな魚ですなアブラボウズ。ポテンシャルが高いから?高級なのにさらに偽装されて高く売られるなんてなかなか他の魚にはなかなかできないですよ。

 

で、アブラボウズが食べられている主な場所もついでに調べたんですが、関東(神奈川、静岡)・東海地方みたいですね。そりゃ東北にいるわたしには見かける事のできない魚だなぁ、と。多分塩竈の料亭がすごい店だったのでしょう。と思っていたらアブラボウズの生息地を見てびっくり!

 

 

北太平洋深海…

 

だったら東北の太平洋側ならどこでもお目にかかれそうな気もするんですが…わたしは市場にも結構行くけど売っているのは見たことないなぁ。うーん不思議な魚だアブラボウズ。

 

ちなみにわたしはそのアブラボウズが偽装されていたクエの方も鍋で頂いたことがあるのですが、酔っ払っていたからか、おープリプリな魚だなぁ美味しいなぁという語彙力の欠片もない感想しかでなかったんですよね笑。しかも食べたときにクエだと気づいて無くて後で会社の人に教えてもらったという。

 

んじゃいっそ通販でクエもアブラボウズも買ってみようかなと思ったら、クエが500gで安くても9000円くらいから、アブラボウズが500gで5000円くらいからって、あれ?そんな言われているほど価格差が無いんだけども…時期じゃないからかしら?

 

それにしてもクエが100g辺り1800円、アブラボウズが100g辺り1000円と和牛もびっくりな値段ですな。そもそも鍋では別に食べなくていいからそんな沢山はいらないし刺し身で1パック分くらいの切り身でいいんだけども、その辺で売ってないよなぁ刺し身パック笑

 

クエはやっぱりというか、コース料理で高級なお店が全国ちらほらあるんですが、アブラボウズはオシツケの名前で親しんでいる神奈川県小田原まで行けば刺し身を含む煮付けや炙りなど結構色々な料理をお求めやすい価格で食べれるみたいですね。小田原場外市場という所が良さそうかな、もうちょっと暖かくなったら行ってみたいなと思いました。

 

そんなわけで小田原までアブラボウズを食べに行ったらまた記事にしたいと思ったおよでした。ちなみにうちからだと小田原場外市場まで高速を使っても6時間コースですな。もはや旅行だなぁ笑

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