スピーカーたけさんの香港に行こう

たけさんの事を前回の記事で書いたら早速もっと書けとのお言葉を頂いたので昨日の記事に引き続きたけさんネタを書きます。これもまた今から10年以上前のお話。昨日の記事を読んでいない方はまずはそちらからお読み下さい。

 

 

たけさんはよく喋る人だった。とにかく喋る。どこでも喋る。なんせよく喋りすぎてあだ名がスピーカーである。そんなたけさんと車でドライブな仕事だった日の事。朝の大雨と昼から雨上がりのせいでじめじめした空気の中、二人で車に乗り込む。わたしが運転で、出発と同時にたけさんはどうでもいいような話を連発しだす。

 

「俺は娘が生理の日も分かってるんだっ!」

 

なんて仲良しだねぇを通り越してドン引きするような家族の話をズバズバしやがる。そんな娘さんも今度結婚するらしい。かわいそうだな婿さん…こんな親父じゃ嫌だろうなぁ。

 

たけさんはもうトークに夢中であり、聞き役のわたしは運転をしていても眠くはならない。が、だんだん飽きてくる。まぁ昔二人でうちの地域から南の方まで行った時、約10時間ぶっ通しで会話された事もあるのでもう慣れたと言えば慣れたんですけどね。もうね、どうやったら人はこんなに話せる様になるのかと。なんせ手に持ってるたばこの灰がボトボト座席に落ちているのを気づかないくらいたけさんは話に夢中なんですから。で、おいおいそのぶっちらかしてる灰を掃除するのはわたしでしょ?って言おうとした時にたけさんが言い出したのが、タイトルの言葉である。

 

香港と言えば割と最近(と、言ってももう20年以上前ですけど)中国に返還された事と、100万ドルの夜景くらいしか思いつかないくらいわたしは海外に疎い。なんせ行った事がないですし日本も制覇していないのに海外はまだ早いかなと思っていたりします。して、なんで香港なんですか?と聞いたら「友達が香港にいるから~そいつがさ~」とたけさんのマシンガンがまた火を吹く…しかし意外とインターナショナルなんだなたけさん…

 

たけさんがその友達と仲良くなったのは結構なむかーしの話。どこかの社長さんに誘われて訪れた香港旅行、たけさん初海外での事。そのどこかの社長さんの友達だった、いわゆる友達の友達だったけどたけさん得意のスピーカーっぷりを発揮して三日間の旅行ですっかりマブダチ(たけさん曰く)になったらしい。

 

そのマブダチは元々はチャイナな方だけど、日本で働いたりもしていたので日本語ペラペラだった。初海外で浮かれまくったたけさんはきっと異国の地で日本語が通じる外人に出会ったのがうれしくてヘラヘラ喋ってたんだろうなぁ。

 

それからたけさんは度々香港を訪れ、その度に友達にあちらこちら連れて行かれとてもいい思いをしたらしい。なんせその友達も香港で社長をやっていてとても羽振りが良かったみたいなので。

 

で、たけさんはマブダチになった友達からぽつぽつと身の上話なんかを聞かされた。彼は元々中国出身で香港には密入で訪れた。まぁ当時イギリス植民地だった香港には色んなドリームがあったから、なんてのが密入の理由。そこでまず彼は消防団に勤めた。なんでわざわざ密入国までして危険な職についたのか。するとどうもあちらの消防団にはとんでもない儲け方があるんだよ~なんて話を続けた。

 

普段たけさんは、酔っぱらって部下をフォークで刺した話とか本当にどうでもいい話をするので聞き流していたのだが、この日は珍しく聞き入ってしまった…だって「密入」とか「香港ドリーム」なんて言われたらちょっと胸がときめいてしまいますもの。ヘラヘラとたけさんが話を続ける。

 

消防団の儲け方…まず、火事が発生すると誰よりも先に駆けつける。ってそりゃ火消しなんだから当たり前なんだけど…で、現場に着いたらいきなり中に突入する。ここからがポイント。普通なら生存者とか残っている人がいないのか確認する為に突入するんだろうな、と思うはず。だが、まず突入してあちらの消防団が行うのは…

 

 

金目の物を片っ端からポケットに詰め込むっ!とにかく詰め込むっ!

 

えーっそれって火事場泥棒じゃないですか!とわたしが珍しく普通に反応する。その反応がなんか嬉しそうなたけさん…日本でそんな消防員がいたら即座にニュースになるだろうし今どきならSNSでボコボコに叩かれるだろうし道徳心に欠けるって言われて社会的に干されるだろうなぁ。

 

しかし香港の方の考え方は違った。あちらではどうせ火事で燃える物だから持っていってもいいんだよ~って思うらしい。消防団も、火事を出した方も。異国の文化って奴はすごいですねぇ。

 

で、友達はそうやって火事場泥棒で儲けたお金を元手にレンタカー屋を開業する。あちらで車は金持ちのステータスらしく庶民にはなかなか手に入らなかったようで。なんせ当時は車体の100%税金を支払わなきゃいけなかったとか(ぱっと調べたけどおそらく今も高額な税金がかかりますね)。つまり車が200万だったら200万の税金を取られる、と。あっちでフィット買う気分とこっちでレガシー買う気分は同じなのか金額的に…

 

そんな香港の車事情に目をつけた友達は結構稼いで羽振りも良かった、と。そんな人が友達だからたけさんは香港が大好きで、およちゃんも行こうぜ金の心配なんかまったくいらないから~マブダチが出すから~なんてわたしを誘ってきた。

 

そりゃ、そそる。そそる話である。

 

そこからは大型クルーザーで香港の夜景を見ながら浴びるように酒を飲む話とか、香港は植民地だったから食いもんは何でも揃ってるんだとか、金持ちと行く観光の話とかたけさんのマシンガントークが炸裂してすっかりわたしは蜂の巣にされました。

 

って、贅沢の方は別にそれほどしたいとは思わないけど、どちらかと言うとそのとんでもないやり方で成り上がったマブダチって人に会ってみたいなぁと思いました。そういう人との会話って楽しいですからね。何というか、自分には持ってない物を持っているというか…探求心がそそるというか…

 

んじゃ解りました。行きますか香港!とわたしが言うとんじゃ次の夏くらいだなぁ、マブダチに電話入れとかないと…あっ!と、言いたけさんのマシンガンが止まる。

 

 

 

 

「あ~忘れてた!あいつもう死んだんだったっ!」

 

 

なんでこの人はここまで話しておいてそんな大事な事を忘れているのだろうか…マブダチじゃないのか…

 

「やっぱさ~苦労して一代で財なんか築くと、早死しちまうんだよな。昔はロックスターは27歳が寿命だなんて言われてたしな」

 

と、たけさんは吐き捨てて、次の瞬間にはもう違う話に、当時日本を騒がせていた朝青龍の世間への態度の悪さについて、に移っていた…あなたも一応一代で社長やってんじゃん、早死しちゃいなよ、と言おうかと思ったがまた話が長くなるであろうからやめて置いた。

 

湿気がじめっとしている不快な空気の中、車だけは目的地に進む。やっぱりスピーカーたけさんはヘラヘラだだ漏れし、わたしは適当に相づちを打つ。そんなとても微妙な日の午後でした。

 

ちなみにたけさんの中の時空と記憶は歪んでいるのでどこまでこれが本当の話なのかわたしには解りません。なんせマブダチが死んでいたことを忘れているくらいですから。あしからず…

 

 

と、まぁたけさんのまた雜な一面がよく分かるお話でした。でも、たけさんがすごいのはとにかく喋り倒して倒していつの間にか契約をもらってくるんですよね。こういうのがカリスマって言うんだろうなーって当時思ってましたけど特に真似したいとは考えていなかったおよがお送りしました笑

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