およ、教壇に立つ

全く個人的なお話になるんですが、わたしの本名をGoogleさんあたりで検索するとありがたいことに上の方に弊社の会社概要が出ます。同じく上の方に同姓同名のなんか経歴がすごい人が出てきます。会ってみたいなぁ…して、下の方にスクロールしていくと国会図書館の論文という記事が出てくるんです。この論文は同姓同名の違う人ではなく、色々あってわたくし事およの記事なんですよね。今日はそんなお話です。

 

 

10年くらい前の12月のクソ忙しい時期。20代も終盤に差し掛かっていたおよは大学で同じゼミだった友人の結婚式に参列していた。この結婚式の内容がまぁ、非常におとなしい感じで…悪友も同じゼミなのでこの結婚式に参加していたのだが、まず余興はない、挨拶は会社関係だけ、おまけに親戚と仕事絡みの人しか呼んでいなかったらしく、少数精鋭に選ばれてしまった友人代表のわたしと、大学からの友人である悪友、そして師匠(大学時代のゼミ長、教授)が、淡々と進む式の中、ただただボケッと座っているだけだった…

 

式自体に手を抜いているからつまらないのではなく、関係各社全方位に気を使った結果非常にかしこまった式になったのだろう。そういう目で見ればまさにお手本通りの結婚式である意味面白いと言えるが、いかんせんわたしは結婚式に呼ばれたらだいたい何か、余興とか二次会の幹事とかをやらされてきたタイプなので、今回の結婚式は正直暇だった。

 

途中から悪友はもういい加減飽きたんだよと言わんばかりにケータイをいじりだし、相手がどこの女性かは知らないが、メールを打ちながらニヤニヤして一人の世界に入ってしまった。こうなるとわたしもケータイを出してなにかを始めようかとも思ったが、わたしの隣で一人ぽつんと座りビールをちびちびやっている師匠をほっとく訳にはいかないよなぁと、思い止まる。ついでに師匠にお酌しつつ、最近(大学の方は)どうなんですかと聞いてみた。師匠にお会いしたのも久々だし。

 

大学かぁ、もうなぁ、悲惨だよ。

 

その一言だけを言うとまた何か考え出したのか、黙ってビールに口をつける。そういやこの師匠、シラフだとあんまり喋らないのよね…メールはやたら長いのに。まぁわたしもこの結婚式が終わるまでやることもなく暇だし、ガンガン師匠にビールを注いだ。段々酔っぱらってくる師匠。お酌をしながらふと、わたしのいた大学の事を考えてみる。

 

大学が新設されたと知ったのは、およ高校3年生の冬。というかもう2ヶ月もすれば卒業する正月のことである。当時わたしは進学する気もなく、かといって就職する気もなく、とりあえず高校を出たら東京辺りでホームレスになろうなんて考えていた。今でこそ何という中2病と思うが、とりあえず、漠然と平々凡々に暮らしてきたわたしは、理由も無くとんでもなくつらい目にあって見たかったのだ。

実際、大学に入ってから2ヶ月ほど失踪をしてホームレスをしてみたのだが、いやぁあれはきつい。寝るに寝れないし屋根があるのって大事なんだと実感した。安全のために昼夜逆転(夜起きてて昼間寝てる)のも辛いし深い睡眠は取れないし。当たり前だけども。

 

で、正直にお袋にわたし高校を出たら東京でホームレスになるから、って言ったら、頼むから進学してくれ!何て答え。しかし時すでに高校三年の正月ですよ、普通の大学はとっくに願書を閉め切っているし、センター試験も申し込んでいない。専門学校は目的もなく行った所でお金の無駄になって終わりそうだから嫌だったし…さてどうするかと考えていたら、新聞の一面にうちの大学が掲載されていたのである。

 

新設で、お国の認可が降りるのに時間がかかったからか、そんな時期からの願書受付。しかし新設だし、人気もあるだろうなぁ、倍率も高そうだしろくに高校にも行ってないわたしじゃ無理じゃないかなぁ…でも、受ける試験は2教科だけでいいんか…しかし勉強なんかした事無いからなぁわたしは、と思いながらも、他にアテも無いからとりあえず願書を出して試験を受けてみる事に。

 

結果、やっぱり新設からか倍率5倍(後で師匠に聞いた)の割と難しい試験の中、合格したおよ少年。後で師匠に聞いた話であるが、選択科目が数学か英語だったのだがこの数学の方がかなり難しかったらしく、数学と英語の平均点にかなりの差が付いてしまったが為に、数学の方に結構な上乗せして受験者のバランスを取ったらしい。

 

ちなみに、わたしは数学で受験していた。勉強なんぞまるでしてきていなかったわたしがが、唯一人よりちょっとだけできる科目が数学…午後からの試験なのに午前中、駅前のパチンコ屋で北電子の名機である大漁2を打っていたにも関わらず、師匠曰くわたしはすごくいい点だったらしい。うん、そりゃすごくいい点にさらに上乗せされたら受かるよね。もう1教科の小論文は…当サイトの通り、駄文で提出しましたが数学のアドバンテージのおかげで無事に合格。確かグローバル化について次の記事を読んで論文を書きなさいなんて内容だったが、とりあえず記事に出てきた人を論文で褒めて褒めて褒めまくったという笑

 

その後、大学に入るまで全く勉強をしていなかったわたしが、多大なツケを払う事になりヒイヒイ言いながら勉強して単位を取得し、悪友が多々起こす事件を乗り切って何とか卒業。1期生は結構みんないい所の企業に就職している。受験の倍率が高かったからか、やっぱりわたしみたいにアフォな奴はそんなにいなかった訳ようで。変わり者は多かったけど。

 

所が、わたしが大学を出て少し経ってから、なんかとんでもない事をうちの大学の理事がやらかしていた事が発覚。全国版ニュースでも大きく取り上げられた。結果、理事は逮捕。大学の信用はガタ落ち、在校生の就職率もガタ落ち、結果生徒が集まらなくなり受験の難易度を下げて…

 

もうさ、バカばっかで悲惨なんだよっ!

 

何回お酌したのか解らなくなってきた頃、師匠が唐突にそう声を荒げて言った。ちょ!結婚式中っすよ!なんて言いながら、まぁ何でそうなったんでしょうね、お世辞にもわたしは頭良くないですがね、と言いながら師匠に聞いてみる。

 

いや、あんたは頭良いとか悪いとかじゃなくて要領がいい。

 

それ褒めてんのか、貶してんのか解らないっすよ!何て言うと、師匠も酔いが回って気分がノッてきたからか、わたしにこう耳打ちをした。学校の内情ってやつだ。とてもこんなところには書けない内容で、

 

一言で言うと何という夢のない話

 

てか、卒業生にすんなよそんな話!と、わたしが言ったらいいんだ別にあんたは働いてるし、なんて言いながら言葉を続ける師匠。何ともノリノリだ。

 

まぁ、そんな事は人気のない大学ならどこでも問題を抱えているんだ。しかし、事件後に学校がどうなってるか、どんな生徒が多いのかは…想像付くだろ?と、師匠が聞いてくる。

…確かに。想像は付きますがね。

 

中には真面目な奴もいるんだ。しかし大半は出席を取らなきゃ講義にも来ないし、来たら来たで大声でくっちゃべってるし…

 

ちょっと胸が痛くなるわたし。出席を取らない講義は出席しなかったし、行ったら行ったでこっそりゲームボーイでポケモンとかプレイしていたし。まぁ、何となく解りますよその生徒達の気持ちは。なんて言うと、

 

んじゃ、あんた講師やってけろ。

 

はいっ!?

 

なんで急に話が何でそうなるんだ!どうしてわたしにそんな事を言うんだって聞いたら、だって解るんでしょ?なんて言う。いや…まぁ…わたしもそう言う部分あったよなぁなんて思っただけで…

 

言葉に困っていると、師匠はこう言った。

 

まぁそれは冗談として、あんたにぴったりの講義があるから、一コマやって、生徒達にガツンと喰らわしてよ。何が起きてもいいからさ、責任は俺が取るから笑

 

何を喰らわせるのかはさっぱり検討も付かないが、とにかくわたしみたいなのに講義をやって欲しいらしい師匠。しかもこの言い草は相当何かに困っているみたいだしなぁ…まぁどんなくだらない事にも全力で立ち向かうのがわたしのモットーですので。んではやりますよ。そのかわり、どうなっても知りませんからね。と言うと、師匠はニコニコといいんだ、うん、ありがとうなんて言っていた。

顔はすでにゆでタコみたいに真っ赤であり、どうせこの人覚えてないんだろうなぁなんて思ったり…ちなみに結局悪友は結婚式が終わるまでケータイという一人の世界から抜け出さなかったという…

 

 

 

 

数日後、

 

こないだは久々に楽しい時間を過ごせました。なんてタイトルで師匠からパソ子にメールが届く。お、あのゆでタコみたいな状態で師匠は覚えていたのかぁと本文を見ると…以下本文。

 

早速ですが来週の木曜日にお願いします。

 

講義名:グリーンツーリズム論

 

時間:2コマ

 

何をやってもかまいませんから。

 

 

ちょっと!勝手すぎる笑

 

時は年末、そりゃどこの会社だって忙しい時期だし当然わたしの会社も具合が悪くなるくらい忙しいっての!そんな中急に平日の午前中空けられないって、せめて年明けにして!と、いう内容を丁寧に丁寧に直して師匠に送信。了解と入ってきて一段落。

 

しかし、グリーンツーリズムか…まぁ確かにわたし向けと言えばわたし向きなのかなぁ…

 

グリーンツーリズム。平たく言えば、都会の人に田舎の自然に興味を持ってもらう事。詳しくはこちら の農水省のサイトでもを見て頂いた方が早いと思う。かなり広義な意味を持ち、かつてテレビ東京で放映していた「田舎に泊ろう」や田舎の国道沿いによくある道の駅なんかもグリーンツーリズムの一環だったりする。

 

では、何故そのグリーンツーリズムはわたし向きと言えばわたし向きなのか。まぁ今行っている仕事が、自然に関わっているというか…ちょっとわたしの職歴の話でも。

 

わたしは大学を出て新卒で公務員みたいな仕事に就いたんですが、仕事があまりに(個人的に)つまらないのと、上司の失敗を被せられて始末書を書いたと言う事件があって1ヶ月ちょいでやめちゃいました。始末書の件は個人情報に関わるから深くは書けないんですが、端折って書くと、

・裁判所と仲が悪い仕事場

・裁判所からの頼まれごとをわたしの上司がミスる

・その日休みだったわたしがやらかしたことにされた。始末書いっぱい

それだけなんですが、就職したばっかりでこんな事やられるならこの先いても良い事ないわな、とあっさり離職。その後ディスプレイ業のバイトをしているときにいつぞやの記事にも出てきたたけさんに誘われてたけさんの所に就職。詳しい内容はたけさんの記事でも見ていただくとして、花や植物を扱いディスプレイをする営業みたいな仕事をこの時行っていました。

このお話を人に話すと最初の職場なんでやめたのもったいない!って結構言われますけど後悔は全く無いですね。わたしはつまらないことをやり続けられるほど人間できていないので笑。その後たけさんが定年退職した後に保険屋に転職して現在に至ります。

 

まぁ、師匠のゼミも、わたしが在籍していた時は地域環境マネージメントなんてゼミ名でしたし、当時こんな仕事をしているのを知っていたから師匠はわたしに講義なんかやらせてみようって思ったんでしょうね。

 

それにしても、確かにわたしは人へ緑の関心を持ってもらうような仕事はしていますがね、グリーンツーリズム論となればちょっと話が違う気が…それに結婚式の時、ガツンとやってくれみたいな事言ってたしなぁ。ただ仕事の話をしても詰まらないし…まぁとりあえず年末だし忙しいしと、講義の事を考えて手仕事を疎かにする訳にもいかないからなぁ、ひとまず年明けまで保留なんて考えていました。

 

 

 

月日が流れて、年明け。講義一週間前。

 

ええ、そこまで実質何の準備もしていませんでした笑

 

年明けまでの間に、テキスト使って普段は講義をしているんですか?と、師匠にメールをしたら、この本だよと返信を頂きました。

ウォールデン・森の生活…内容をまとめるとソローさんって人が、文明を捨て2年間自給自足の生活をした話ですね。ナチュラリストのバイブルみたいな本らしいです。しかしこの本がまた難解でして…言葉も内容も難しい。とりあえず、一応目を通すかと読んでみたものの、結局講義に向けての準備をこの本を読む事しかわたしはやっていなかったという。

 

しかし、読んでみて気づいたのですが、師匠はこの本をただ読むだけの最悪の講義をしていた。なんて言ってましたがね、興味のない人から見たらこれは確かに拷問ですよ。アウトドア好きならともかく、インドアな人には全く詰まらない本だと思います。なんせ今の世の中、甘栗むいちゃいました的な利便性を感じる過剰なサービス業的発想がウケますからねぇ…てか最悪の講義とか何で自分で解っていてやってるんですか?と師匠に聞いたら、

 

まずは本を読む事を覚えてもらいたい。

 

なんて言ってた師匠笑

敷居が高くないですかこの本では笑

 

まぁ、何となく解っていたのだが、いくら酒に溺れていても、普段はあんな暴言を吐く人じゃなかったんです師匠って。結局、大学がやらかしてその後入学してきたのにとんでもない子がいるとは言え、こんな講義をする人じゃなかった。もう、疲れていたんだろうなぁと。上では端折りましたが、結構生徒が乾燥させたとある葉っぱを吸ったりとかやらかしていて、師匠はその度巻き込まれていたみたいですし。

 

でも、これって悪循環に陥りやすいですよね。師匠がこんな授業をすれば、生徒はますますやる気を削がれる。生徒がテンションダウンすれば、ますます師匠は適当な講義をする。そうすると生徒は…と、いうような具合に。

 

この講義を履修していた生徒がもう気が滅入っちゃってるんだろうな、興味のない本で朗読会の繰り返しで。それで何をやってもいい、責任は俺が取るなんて言ったのであろう。しかし裏を返せば何をやってもいいから、何か良い事を生徒に残してやってくれって事なんだろうなぁ。講義の1週間前にわたしこんな事を考えていました。

 

さて、講義内容をどうしようか。段取りの書かれた師匠からのメールによると講義始めの5分は、師匠が生徒を講義に集めるために、テストの範囲の話をするなんて言っていた。その後わたしが入って何かをする。うん、なんでそんな人を増やす必要があるんだ…結果から言えば、テスト範囲を教える効果は結構あったらしく、いつもの倍以上の生徒がわたしの講義の時は集まったらしい。

 

残り85分…大学の講義は90分ですからね。85分って、長いです。しかし何かを本格的にやってもらうには時間が短い。わたしが淡々と喋るには長い。余計そんな講義を受けてきた生徒達ですから、だらだら進めていては話を聞かなくなるだろうし、何のパンチも与えられない…うーん、と思い寝っ転がってふと自室の天井をみると、わたしの家の同居人、ミッキーマウスツリーちゃん(観葉植物の鉢植)が冷蔵庫の上に鎮座しておりました。

 

あ!

 

閃くわたし。何をしてもいいって言ってたし、これでいいか、と。とりあえず全部「ソレ」に時間を使うのも変な話なので、講義で使う資料をパワーポイントで作りつつ、そっちの方も裏で手配を始めたのでした。

 

 

講義当日、朝一で会社に。当時わたしはバイク一筋で車を持っていないので、事前にたけさんに申請して社用車を借りました。その後あるモノを取りに取引先へ。引き取りが終わった後、その足でホームセンターでお買い物。パソと、結構な荷物を抱えて大学に向かう。師匠に結構荷物あるから、手伝いに下まで降りてきてと頼む。

外に出てきた師匠は、これは…と、ひたすら驚いていた。わたしはどんな講義をするのか聞かれていなかったから、何をやるのかを師匠に言ってなかったもの。何やってもいいって言うから、これを作ってもらいますわ、と言うと、ほぉ~なるほどな、なんて師匠は言う。意図はあっさり見透かされたようだ。まぁ、わたしは論じて生徒たちになにかするようなタイプではないですし笑

 

で、教授室に行き、本日の講義の説明。最初5分はテスト範囲の説明を師匠がするとして、残りの85分はまず25分程度パワーポイントで作った資料を見せながらわたしが説明する。残り60分は、工作をしてもらう。そう言うと、パワポの資料を見ながら師匠はこうわたしに一言。

 

やるなぁ

 

いや、まだやってないけど笑

とりあえずこの講義に使う荷物はわたしが喋ってる間に師匠が教室まで運ぶ段取りを組んでいると、講義の時間が近づいてきた。んじゃ、準備もあるし移動しようかと師匠が言う。パソ子をプロジェクターに繋がなきゃならないしね。ええ、と答えて、いざ戦場へ。

 

教室は、結構広い階段教室だった…キャパは150人くらいですね。師匠、こんなにある席が埋まるくらい人は来るんですか?と聞いたらまず埋まる事は無いだろう、と言う。履修者が全員来れば埋まるが、普段は履修者の5分の1も来ないって言っていた。しかし、テスト範囲を教えるって言ったからそれなりには来るだろう、なんて。そうですか。まぁわたしでも普段行かない講義でテスト範囲を言いますなんて言われたら出席するだろうし笑

 

パソ子をセットしつつ、講義時間5分前。ボチボチ生徒が集まり出す。うーん、なんだ。とんでもない奴ばっかりなんて師匠が言うから、北斗の拳の雑魚みたいなのばっかりかと思いきや意外に普通だなぁ。FF7のクラウドみたいな頭をした金髪ギャル男や、お水関係の仕事してるわなって頭を盛って着飾った女の子をちらほら見かけるくらい。

 

生徒たちを見ながらそんな事を考えていたら講義の時間となった。前述の通りまずまずの生徒の集まり。さすがはテスト範囲効果である。まずは予定通り恩師がテスト範囲の説明。準備をしつつ話を聞いていると、どうやらテストはテキスト持ち込み可らしい。持ち込みができるなら範囲なんか言わなくてもいいのではないかと思ったが、後で聞いたら持ち込みは可だけど、範囲を知らなければまず探しきれない書ききれないくらいめんどくさいテストにする、なんて言っていた。ほんと意地悪なのねもう師匠って…

 

で、テスト範囲の説明が終わった。次に今日は我が校の卒業生で~とよくある紹介を始める師匠。はいはいわたしの出番ですね、なんて思っているとここでトラブル発生。

 

プロジェクターが写らない笑

 

事前のテストでは映っていたのになぜか本番では映らないプロジェクター笑

師匠これなんとかして笑

数分後、一応写るように。しかし、映らないグダグダがあったせいで、生徒達もグダグダに。まぁ仕方ない。どうせわたしの喋りはフェイクみたいなもんだし。只今ご紹介に預かりましたおよと申します、と講義開始。

 

トークをまとめると、

 

農村漁村に滞在し、農林漁業体験やその地域の自然や文化に触れて、地元の人々と交流を楽しむグリーンツーリズムと、都会のオフィスやショップの中に緑を設置や営業をするわたしの仕事は直接的な関係はない。

しかし、双方のキーワードとなる「自然」においてその二つは間接的に繋がる。要は生活に関係の中に自然と関わり合いのない人々に緑を提案するのがわたしのお仕事の役目であり、その興味が発展した先にグリーンツーリズムへの意識があると言っても過言ではありません、なので、今回この場をお借りして、少しわたしの考えを話させて頂きます。

 

みたいな感じで淡々と喋るわたし。営業マンだし人前で喋ることもそれなりにしていたので緊張はない。しかし、やっぱりまぁこれは想像の通りというか、生徒の皆様にやる気や聞く気は殆ど見受けられない。女の子なら興味惹くかなと思ってパワーポイントでわたしがたけさんと共に装飾したブライダルの写真なんか表示していたのに。これは手強いなぁと思いつつ、やや駆け足で話をしてみる。

 

その後、植物を室内に置く事で得られる効力とか、なんで人間が自然を欲するのか、そのメカニズムは未だ解明されていないけど、食べるものや着ているもの、さらに原油何かも元は植物ですからね、身近にあるものが結構植物で出来ていますから、それで自然と人は植物に触れたくなるんでしょうね、みたいな話をした。うん、やっぱり生徒たちはあんまり聞いてない。教壇に立つとわかるんですよね、生徒たちがはよ終われよみたいな顔してるなって笑

 

んじゃ生徒達は話も聞かんしちょっと時間的に早いけど、そろそろ工作に移りますかね…と思い、言葉を切り出す事に。グリーンツーリズムもそうですが、実際に触れてみないと解らない事ってあると思うんですよ。本日はいい機会だとわたしは考えましたので、こんなモノを用意させて頂きました。

 

師匠に合図。ささっとモノを運び込む師匠。一拍おいて、わたしはこう言った。

 

 

これから皆さんに、どろんこ遊びをして頂きます

(バトルロワイヤルのビートたけし風)

 

 

えっ!

きょとんとする生徒達。そしてざわざわしだす生徒達笑

 

今朝方わたしが用意したのは、3~4号ポットの観葉植物を色んな種類で沢山の数、水苔、粘着度の高い土、張り糸、受けるお皿、はさみ、軍手…

 

今日は、苔玉作りをしてもらいます。普段本ばっか読ませられてるって聞いてましたから笑

 

生徒のざわざわ継続笑。師匠に手伝ってもらい、簡単な作り方を書いた紙を配り、まずは前に着て植物を生徒達に選ばせた。

わたしはお仕事で和風庭園とかも作ったりしていたんですが、その時アクセントで苔玉を使うと装飾全体が妙に映えたりするんです。なので暇があると一時期苔玉を作ったりしていたんです。取引先に取りに行ったのは苔玉に使う観葉植物だったんですがね、大学の講義で使うって事情を話したら、小さいやつだし仕入れてから時間が経っているからと、なんとタダで譲ってくれたんです。お礼にお菓子を置いてきましたが。

あと、山苔とか緑色の苔の方が苔玉は生えますがね、今回は水苔しか使わなかった。その他はさみやら受けのお皿(植物の土をばらすのに使う)とかは会社にあったのでソレを拝借。事が終わってからキチンと返しました。

 

苔玉の行程。まず、観葉植物の土をばらします。で、根っこだけにしたら今度はケト土(粘着性の高い土)ブレンドの土で根っこをコーティングしたら、水苔を巻いて張り糸で縛って完成。本当は更にこの上に緑色の苔を巻くんですが、そこまでしっかりと作るのは結構難しいし、苔を山にいって拾ってくるの面倒だったので。

 

それで、最初こそ苔玉づくりを嫌々始めた生徒達も、なんだか工作をしていると、こう明るくなってきたというか…わたしは教室をぐるぐる回っていたんですが、段々と呼び止められてこれどうすんすか?とかギャル男に聞かれたり、さらっと手伝ってあげたり。何て言うか、やっぱりよっぽど師匠の本読み講義はつまらなかったんだろうなぁ…なんて思いつつも、何故か頼んでもないのに苔玉を作り出している師匠を見て、この人ももっと素直になればいいのに…なんかはしゃいでいるし…なんて思ったりする。

 

講義としては外道ですが、その様子を見ていると師匠が言うほど生徒はとんでもないやつじゃない。苔玉作ってみろって言ったらちゃんと作っているし…本当にクソガキだったらふざけんなとか言って帰ると思いますがね。

 

その後約1時間、先に出来た奴は困った隣の奴を手伝って、とか、植物の名前を知りたい人はわたしに聞いてねとか言いながら、ちゃんと泥んこ遊びに参加した生徒全員が苔玉を完成させました。2個作った生徒もいたという。で、〆のわたしの言葉。

 

グリーンツーリズムに限った話では無いですが、何かを作ったり実行したりするのは、本から学べない事を沢山知る事が出来ます。わたしはそう思うので、今回こういう事をさせて頂きました。本日はお付き合い頂き有難うございました。

 

って、言ったら、結構な拍手をいただきました。締めの言葉としてはひどいもんだと思うけど笑

 

 

 

その後、いくらかは生徒に掃除してもらったものの、やっぱり泥だらけになった階段教室を師匠と二人でモップがけ。掃除の途中に師匠がわたしにこう言う。

 

あんた、やっぱ要領いいよな。

 

何に対しての要領なのかは解らない。しかし、さっさと師匠に見透かされたコンセプト、こういう学校の感じで更に専門的な学部ではないと、入学してくる生徒は特に目的もなく、頭もあんまり良くなく、就職したくも無くって人が多い。そういう生徒って別に学びたいから大学にいる訳でもないし、漠然と何をする訳でもなく生きていたりするじゃないですか。丁度東京でホームレスになろうとしていた高校生のわたしみたいに笑

そんな思いをこんな短い時間で全部解って欲しいなんて大げさな事言う気は無いんです。ただ、やらないよりは何でもやった方が面白いんじゃね?まぁ今回の講義はそれだけの意味だったんです。はい。しかし師匠はやたら褒めていた。うん、いいアイディアだったと。

 

ちなみにこの日の日当は最初からいらんって言ったのに貰えました。うちは(大学の講義依頼料は)安いけどなんて言いつつ師匠がポケットマネーからその依頼料と同額を差し出してきた。講師のお給料…はさすがに言えん笑。お小遣いにしては多いかなってくらい。

 

けど、講義時間での時給だけ見たらかなり高い額ですが、それ相応の知識も準備いるからなぁ…でも師匠はわたしを気に入ったらしく、例えこんな邪道な講義じゃなくてもあんたは生徒の事解りそうだから、非常勤講師でもなる?なんて言ってきたので、ああ、やってもいいですよ。とだけ答えた。その後いろいろありましてこの話はなくなりましたが。

 

その後、数日経って師匠からわたしのパソ子宛にエクセルファイルが添付されたメールが届きました。内容は、こないだのわたしの泥だらけ講義で最後に感想(出席カードに簡易に)を書いてもらったのだが、それをまとめたから、送る、と書かれていた。早速エクセルファイルの中を覗くと、こういう事はやった事無かったが面白かった、とか、いい経験になった、とか、まぁ建前でしょうが、とりあえず心には残ってもらった様で、それはそれでいいかなぁなんて感想を読んでいると…

 

 

 

王子様のようなOB笑

 

こんな事を感想文に書いていたって師匠が言いふらしていたらしく、この後数ヶ月してゼミOB会(飲み会)の幹事をやった時、出欠の確認を聞く人聞く人が何故か知っていて王子様って言われたおよでした。あれだ、生徒に舐められないようにメガネではなくコンタクトで行ったのがまずかったのだろうか笑。まぁわたしは最早ただのおっさんだが笑

 

まぁ、文系の大学で泥んこ遊びを教室でさせたのはわたしだけだろうということでこのお話は終わります。もう10年くらい前の話ですが、この時の生徒さん達は社会に出て元気でやってるんですかねぇ…

 

最初にお話は戻るんですがわたしの名前で検索した際に出てくる国立国会図書館の量入以為出–ソローの経済学批判という論文にはこの泥んこ遊び講義の様子と、王子様のようなOBが記述されています笑。どなたでも閲覧できるのでよかったら覗いてみて下さい笑

 

それで、なんでこの師匠のお話を書いたかと言うと、先日久々にメールで連絡を頂いたんです。内容は今年大学が20週年で、同窓会の会報に一期生代表として寄稿してほしい。との事でした。え、なんか大事そうなことですがわたしが書いていいんですか?と言うと何書いてもいいよーと師匠のお言葉。

まぁ、師匠がわたしにこういう事を依頼するというのはソウイウ事だろうと思って寄稿しました。その様子は会報に本当に載ったら記事にしたいと思います笑

およ、教壇に立つ” に対して12件のコメントがあります。

  1. 秡川信弘 より:

    今しがた読み終えたところです。
    「要領がいい」なんて言ったかな、覚えていない。でも、この文章自体はおもしろい。
    作家もやれば、そっち方面でも結構稼げるんじゃないだろうか?と思いました。
    また、「経験は人を育てる」というのはやはり真理なのだと改めて感じました。
    結局のところ、文章というのはその人が生きてきたプロセスの断片をつなぎあわせたものだろうから。
    大森君の文章のおもしろさは、大森君の生きてきた人生のおもしろさを映し出しているのだろうね。

    1. およ より:

      あ、どうも先生コメントありがとうございます笑
      この記事は当時の手記みたいなのをそのまま書いてるので言った言わないで言ったら言ってる方だと思います。おそらく根底に大学をサボりまくったあげく一気に単位を取得して留年せずに卒業したわたしのアホさがあるからかと思われます笑その節はご迷惑をおかけしました笑

      人生楽しまないと損ですからね〜自分でわりと楽しく生きているとは感じますが、人から見たらただただアホな人生な気もします笑
      作家かどうかはわかりませんが一応弊社は文章も商品にしていてこうやってサンプルを書いている感じです。ただ、逆に注文が来なくなる要因にもなりかねないので結構注意して書いてはいます。誰かをディスったりとかはしないですね〜
      ちなみにあのかずくんの記事も何個かあるので良かったら読んでみてください笑

  2. ピンバック: 7月のラーメン | ozfare
  3. ピンバック: まーくん | ozfare

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