落し所製作委員会

これまた昔々、時はおよ20代の時の何気ない会話。仕事中で隣にはわたしより二回りは上のおっさん。このおっさんがわたしより後輩とか仕事ができるできないとか、よくわからん奴だとかそういうのはどうでもいいんですが、そのおっさんと現場に向かって車を走らせていたのです。すると、普段はあんまり喋らないおっさんだけど急に、

 

ここおれんちなんだよねぇ

 

と、指を指したのはその界隈ではわりと有名ないわゆる「デザイナーズマンション」でした。あ、そうなんですかぁとわたしが言うと、おっさんは気分がいいのか自慢したいのかそれともただわたしと話がしたかったのか、おっさんはマンションの自治会に属していて、向かいのマンションとの抗争話を喋りだしました。

 

その内容は、おっさんのマンションの向かい側に新しくマンションが建つことになって、環境権がーとか日照権がーとかおっさんのマンション自治会で盛り上がって、その新しく建つマンション側と交渉したのだそうで。何度も何度も会合が行われその結果、新築マンションの階数大幅ダウンと近隣の住居に光がちゃんと当たるような構造変更、マンション敷地内に公園を作り地域の子供達が遊べるようにしたんだ。と、おっさんは嬉々として語っていたんです。

 

そういう話を聞いてもわたしはなんかこうピンと来なかったので、そうなんですか、すごいですね、みたいな返答しかできなかったんです。その時はまぁそういう出来事もあるんだなぁ、くらいに思っていました。

 

時は流れて、わたしは転職し20代の頃の営業より多くの人、色んな職業の人に会うようになりました。その中で、一緒に仕事をしたりお客さんだったりしたわけじゃないんですが、色んな会ってきた人の中で極めて様々な意味で珍しい人がいまして、彼はわたしを気に入ってくれたのか色々なことを教えてくれたのです。

 

見た目は、一言で言えば「アウトレイジ」ですね。スキンヘッドで色物のスーツ。年は60過ぎくらいでしたかね。つまりわかりやすく説明すると見た目すごいおっかない人なんですけど、話してみるとまー腰が低い低い。その低さがまた恐ろしい笑。そして、そのレイジさん(別に怒ってはないけど)の前職が、

 

建築交渉請負人

 

だったわけです。正式な職業ではなく普通に組織に(ちゃんとサラリーマン)属してそういう事をしていたそうで。そんなレイジさんとお酒を飲んだときにもうやめたことだから~と色々教えてくれました。して、具体的にどんな仕事をしているのかというと、新築のマンションを建てる時なんかにその近所の人を集めて行われる会合で、日照権がーとか環境権がーと言う人をまぁまぁとなだめて揉めないようにマンションを建てられるように交渉する人だそうで。

 

そのやり方がというと、このくらいがこの辺にマンションを建てるなら揉めないよなーって落し所を入念に調査して、その設計書が完成したらレイジさんはその設計書を盛りに盛るんです。例えば10階建てだったら20階建ての、子供や近所の人が使えるような公園や施設があったらそこを潰して駐車場とかにしてまず一発目の会合に持っていく。当然こんなのふざけんじゃねえとなる近隣住民の人々。

 

そこから時間をかけて、マンションの階数を減らしていき、駐車場の一部を潰して近隣住民も利用できる施設や公園に変更して、徐々に徐々に時間をかけて落し所に近づけていきます。そして、落し所のプラン(最初からこう建てたいと考えてたプラン)を提示し、これ以上は無理です勘弁してください!って言うと、その落し所で近隣住民との交渉がほとんど成立する、んだそうです。

 

もちろんみんながみんなこういう交渉をしている訳ではないでしょうし、レイジさんもどこまで本当の事を言っているのか解りませんしね。ただ、まぁなんかそういう交渉をなんとなく昔喋っていた人を知っていると言うか思い当たる節があるというか、営業の世界では落し所から逆算する販売方法も無きにしもあらずでしょうしね。近隣住民の方もなんだか勝ち取ったみたいな気分になっていいでしょうし。

 

わたしはそういう営業はするのもされるのも嫌ですけどね。めんどくさいだけじゃんって思ってしまうので。例えば車を買いに行ったりしている時「この車他にも交渉している人いるんですよね」とか言われたら絶対に買わないです。じゃあどうぞそちらの方へってなる。探せば全く同じものは難しいかもですが、似たようなのあるでしょうし急かすクロージングはするのもされるのも嫌ですから。

 

 

話はちょっと変わるのですが、今日「コードギアス」という映画を観てきたんです。コードギアスとはガンダムで有名なサンライズ制作のSFロボットアニメで、2期(R2)を含めて全50話(+総集編2話)。キャラクターデザイン原案がカードキャプターさくらや魔法騎士レイアースなどが有名のCLAMPで、1話を観てしまうと最終話まで一気に観てしまう傑作です。

 

内容は気になる方は調べていただくとして、テレビアニメ版で綺麗に完結していたので続編の映画が作られると発表された時、結構それは蛇足になるのではないかと意見が出ていたんですが、今日映画館で観て、テレビアニメ版と変わらずすごい面白かったんです。蛇足感なんて全く無くて、気がついたらあっという間に2時間経っていました。

 

なんで面白いのかはすぐ解りました。新鮮さやひねりや斬新さは無いのですが、コードギアスを全部観たことがあって、きれいに完結した物語だけど、もし後日談と言うか続くとしたらこう続くといいなぁってファンみんなが思うことをそのまんま映像化しているんです。どストレートに、なんのひねりもなく。

 

ファンの望むモノをそのまんま提供する。これって、監督はすごい英断だと思うんですよ。下手するといろいろな部分でなんの代わり映えもないじゃんってなってしまいますしね。でも、この劇場版コードギアスは目新しさと引き換えにそのままテレビアニメ版の最終回の続きとしてすんなりと見れて、物語の終わりまでなんの違和感もなく、引っかかりもなく最後まで観てしまいました。まるでスクリーンの向こう側から監督に「おまえらはこういうのがいいんだろ?」と言われたような気がした。こういうのでいいんです笑。

 

それで、このコードギアスは面白いのであとは全部見て下さいっていう事と、今日の感想に肖ってわたしはやっぱりストレートなのが好きなんだなって思いました。同じく映画の「カメラを止めるな」みたいなひねりや斬新さもあーなるほどなーってな感じですごいなとは思いますけどね、ひねられすぎると頭が追いつかなくてパンクするので笑。

 

そりゃ深く難しいことを考える人もいないと世の中まとまりませんので何にせよ落し所を作る人ってのは必要でしょうが、そういう行為はわたしにゃ向いてないなと再確認した一日でした。何気にこういう落し所営業はネガとポジの違いはあれどちょこちょこ誘われたりして、最近もわたしに儲かるから~なんて声がかかったりしたんですが、めんどくさいからやらないです笑。

落し所製作委員会” に対して3件のコメントがあります。

  1. うーう より:

    デザイナーズマンションじゃなくていいんで、というか、じゃないほうがいいんですけど、新しいきれいなマンションに引っ越したいです。

    1. およ より:

      新しくて綺麗なマンションって最初はいいんですけど大規模修繕に向けて管理費が上がったり住む人が減ると共益費が増えたりと一戸建てにはない難しいとこもありますよね。
      あとよくモデルルームの装飾をしに高層マンションに出入りしたり昔してたんですが、マンションの上の方って妙に風強いしさらに上の階だと部屋の窓開かなかったりしますよね。わたしは田舎育ちなのでなるべく地面に近いところに住みたいなーって思いましたわ笑
      マンションに住むなら8階より下がいいな笑

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