クリエイターに恋して

そりゃ未だにこんなにゲームばっかりしてますから、当然のようにゲームを作ってみたいなーと考えたこともあるんです。そして、そう考えさせられたのは小学校の時の同級生、佐々木くんの存在が大きいのです。

 

佐々木くんは3人兄弟の末っ子で、上二人のお兄ちゃんとは結構年の離れた子でした。彼もゲームが好きな子でなおかつ小学校から近くに住んでる子だったので学校帰りにそのまま佐々木くんの家にゲームをしに行ったりしていました。

 

佐々木くんちにあるゲームソフトは、さすがお兄ちゃんが二人いるだけあって小学生ではまず買わないような渋いタイトルが揃っていて、当時ゲームと名のつくものに目がなかったおよ少年は佐々木くんちにあるゲーム情報を根こそぎ吸収していました。ナムコがスーパーファミコンから発売していた第一次世界大戦をモチーフとしたフライトシミュレーション「スカイミッション」なんてソフトを見かけたのは佐々木くんち以外未だ他にはないですね。

 

ウィザードリィを始めとした海外発祥ロールプレイングの楽しさやシミュレーションゲームのプレイ方法、思えばストリートファイターⅡもスーパーファミコン版の発売日に佐々木くんのお兄ちゃんが買ってきて一緒にプレイさせてもらった時にケンを使い大キック連打していたらおよ少年がまぐれで勝ってしまい、まぁまぁおよくんゆっくり楽しんでいってねと言われながらお兄ちゃんにストⅡでボコられた記憶があります。接待プレイの大事さもここで学びました…

 

そんな佐々木くんが小学校の卒業が近づいてくると、新しいゲームを買ったり、遊びにおいでよと言われることも減ってきました。中学に向けて勉強でもしているのか?聞くと、そこで思ってもいないことを佐々木くんが言ったのです。

 

ゲームを作っている

 

彼はたしかにそう言いました。この頃わたしはゲームを作るのにはプログラミングの技術が必要だとは知っていましたが、佐々木くんがプログラミングについて語っていたことはなかったので、そっかプログラムの勉強を始めたのかと思ったのです。が、彼はプログラムの勉強はしていないとの事。そして、

 

もうすぐ完成するからうちにおいでよ

 

と、言われたのです。そんなすぐゲームってできるものなのかなぁと思いつつ彼の家に行くと、今までなかったパソコン(PC98)が彼の部屋にありました。パソコンってやっぱプログラミング何じゃないのかと思っていると佐々木くんはこれだよこれ、とパッケージを見せてくれました。

 

RPGツクールDante98…ってなあにこれ?と佐々木くんに尋ねると、プログラミングを知らなくてもゲームが作れるソフトだよ、と教えてくれました。のちに(RPG)ツクールシリーズは家庭用ゲーム機に結構移植されたのでご存知の方も多いと思いますがRPGツクールの元祖はPC98版(パソコン版)だったのです。

 

それで、佐々木くんは自分でドット打ちをして(パソコンでキャラの絵を点をぶちこんで書いて)ロールプレイングゲームを制作していたのです。その工程がすごく楽しそうで、そりゃこういう事やってたらゲーム機で友達とゲームするより没頭しちゃうよなーって思いました。

 

それでいて、そのロールプレイングゲームの内容も当時すごく斬新に感じました。よく漫画でもゲームでも四天王とかチームを組んでいたりするじゃないですか。で、基本的に四天王とかチームとかでも敵側の場合、一体ずつちょっと味方側を見下しながら襲ってきたりするじゃないですか。それが様式美だとわたしは思っていた。ところが佐々木くんの作ったゲームではその敵側四天王がいっぺんに襲いかかってくるのです。理由は佐々木くんいわく、

 

味方側ばっかりパーティを組んでいてずるいから

 

そりゃそうだ!しかし当時、複数対1で敵をボコボコにするのがロールプレイングゲームだと思っていたわたしはもうこのアイディアだけで佐々木くんすげえ!となったのです。そして、わたしもゲームを作ってみたいなーって思うようになったのでした。ただ、当時およ家には親父がどっからか拾ってきたパソコン、PC98の互換機、PC286の「U」しかありませんでして。

このPC286U、知る人ぞ知るめっちゃ使えないPC98互換機でして、RAMが少ないのか何なのかわかりませんがよく当時のパソコンゲームソフトの裏にPC98、PC286対応(PC286Uは除く)と書かれていてよくわたしは血の涙を流しましたよ。なんでPC286Uだけ村八分なんじゃあああ!!と。しかも村八分ソフト沢山あったし…

 

で、佐々木くんちでRPGツクールのパッケージを見せてもらった時に対応PCをすぐ確認したのです。そうしたらPC286Uがつまはじきされていない!ということで佐々木くんに教えてもらってから即RPGツクールを買いに行き、RPGの制作に没頭したのです。

 

そうしてロールプレイングゲームを制作すること1週間。RPGツクールは最初から素材があってそれを組み合わせてゲームが作れるのでわりと早く完成しました。その名もマオウクエスト。まぁほらわたしドラクエ世代だからクエストとか何にでもつけたくなるんですよ。

 

そのゲームはとりあえず昔のRPGによくありがちな王様の前からスタートします。そして主役はいきなり王様にこう言われます。「仲間たちは皆死んでしまった。もはやお前しか残っていない。この剣でマオウを討ってこい」王様はこう言うと主役にはがねのつるぎを渡します。余談ですけどドラクエシリーズってはがねのつるぎを武器屋で買った辺りの中盤って何するにもワクワクで楽しいですよね?なので今作ではとりあえずはがねのつるぎを貰えるようにしました。

 

そして城から追い出されるように出発しようとする主役。すると突然「お命頂戴!」と誰かが乱入してきます。そうです、マオウが突然襲ってきて王様をやっつけようとします。王様に主役は「そいつがマオウだ、倒せ!」と命令され、何がなんだかわからぬまま戦闘になります。

 

が、その戦闘前にマオウが一言、

 

あ、武器忘れちゃった

 

まぁなんとかなるか、とマオウが言い戦闘スタート。幾千の手練れなはずのマオウですがはがねのつるぎを持った主役に大苦戦。素手と刃物では当然刃物が有利ですし。力道山だって刃に倒れてしまいましたし。主役は回復魔法や仲間もいないのに蘇生魔法を最初から覚えているので回復しつつちまちま戦って見事マオウに勝利。マオウは「なんでダメージを受けるのだ!」と絶叫し息絶えます。すると王様は側近の兵士に「マオウの死体は城の地下の墓地にでも放り込んでおけ」といい、主役は褒められるわけでもなく感謝されるわけでもなく「さっさと家に帰れ」と言われてうちに帰ります。ここまでがチュートリアル。

 

そして物語は自宅からスタートします。街のマップがドラクエ3のアリアハンそっくり(小学生だし非営利だったから許して笑)。ただし街の人はアリアハンよりいます。ですが、マオウを倒したはずの主役に街の人はみんな冷遇です。というかだいたいの街の人は話しかけると襲いかかってきます。しかもものすごく強く主役はイチコロで殺されてしまいまた自宅からスタートします。

 

だいたい街の人にお前はもう用済みだとか暴言を吐かれて襲われて殺られるんですが、だからといって町の外に逃げ出て一歩歩くと巨大な壁のような敵にやっぱり一撃でやられます。

 

こうやって訳もわからず一人ひとりの街の人にやられていくと、一人の街人に「そんなに襲われる理由が知りたいならマオウにでも聞いてみな!」と言われます。これがじつは最大のヒントで、主役は仲間もいないのに蘇生魔法を覚えている設定もプレイヤーへのヒントとなっています。

王様はマオウの死体は城の地下の墓地に放り込んでおけと言っていたので城の地下にマオウの死体を探しに行きます。城の中は街とは違い話しかけなくても見つかれば不審者として兵士に襲われます。この辺はコナミの名作ゲーム「メタルギア」の影響でしょう。

こうして死線を掻い潜り城の地下の最深部、墓地につき墓を一つ一つ調べると「憎きマオウここに眠る」と親切に書かれている墓があります。そこで蘇生魔法を使うと見事に墓から湧き出てくるマオウ。おまえがなんでわたしを生き返すのだ!と言いつつ、そこでマオウに色々な事を教えてもらいます。

・実はマオウじゃなくてマオ。そして伝説の光装備を装備できるとある山奥に住む少数民族、光族の勇者。光装備という他の民族が装備できない武具を持つ。

・光装備のひかりのけんは魔族に強烈なダメージを与えられる武器で、ひかりのたて、ひかりのよろいは魔族の攻撃を完全に受け流す最強の鎧と盾。ただし光装備を装備できるものは光装備にダメージを与えられる。

・光族は10年前に魔族に子供がさらわれている。つまり主役は光族。魔族の切り札として育てられていた。

・光族の村から転送魔法で突然魔族のボスの所に飛ばされ、ひかりのけんとひかりのたてを忘れたけどひかりのよろいは着ていたから魔族の攻撃は受けずなんとかなるだろうとマオ。しかし運の悪いことにそこにいたのは光族のはがねのつるぎを持った主役。光装備も光族の攻撃には耐えられなく、やられてしまう。

・マオの目には王様も側近の兵士もみんな化物に見えたという、主役は幻術にかかっている。

と、いう超展開でここからマオは主役の味方になり、転送魔法で一旦光族の村に帰り、ひかりのけんとひかりのたてを取る。ひかりのたては主役に渡され、ひかりのけんをマオは装備。光族の長に主役の幻術を解いてもらい、主役の街へ転送。

すると、今まで主役が見ていたのはすべて幻といわんばかりのおぞましい毒マップと化物と化した街の人。セリフは幻術が説かれる前と同じで更に襲われるのですが光装備の前では魔族は何もできず、ひかりのたてを装備した主役にもほとんどダメージが通らず、今まで襲ってきた奴らにお礼参りをして城へ、マオと主役で王様と戦います。王様は当然のようにラスボスで魔族の長。ドラクエで言うところのギガデインとかイオナズンとか強力な魔法をバンバン打ってきますが光装備には効かず、王様をやっつけて、世界が平和になってめでたしめでたしと、

 

もう文面だけで解るクソゲー

 

が完成したのです。説明文書きながらなんとまぁ浅はかだったのかと思いながらも所詮小学生の考えた事なので許して欲しい。というわけで完成したものを3つ下の妹にプレイさせてみたんです。そしたら、家から出てすぐ何回も何回も殺される酷いゲームの出来に、

 

思わず妹は泣き出したわけです

 

シナリオは荒削りだけど当時こういう展開のゲームはなかったし、伏線の仕掛けには自信があったので煮詰めればこんなゲームでも面白いかもなーとは思ったのですがゲームというのはバランスが大事ですし、序盤即死しまくり、後半無双しまくりの極端なバランスではゲームに成り立たず、あーわたしにゲームづくりは合わないんだろうなぁと泣いてる妹を見てこの時思いました。わたしゃ何をするにも極端なことが昔から多かったので、じっくり時間をかけて考えてゲームの制作に取り組む佐々木くんにはなれなかったのです。平たく言うと、そういうこまごまとした作業はすぐ飽きるとも言う笑。

 

ちなみにその後スーパーファミコンで縦シューティングゲームが作れる「デザエモン」というゲームが出て作ってみたのですが、音楽の教科書を見て打ち込んだサクラサクラの曲とともに動く桜の木に猛攻撃されるシューティングを制作。妹にプレイさせてみたらあまりの自機のやられっぷりにまた泣いたのでゲームづくりは向いてねぇなぁと再確認しました。

 

 

と、いう訳で前置きが長くなってしまいましたが、わたしはゲームを作るクリエイターを非常に尊敬しています。産みの苦しみと言うか、人を楽しませるのってゲームに限らずですがやっぱり大変なことですからね。それで、今まで色々なゲーム、コンシューマー、アーケード、ソシャゲとプレイしてきてこれはすごい考えて作られてるなーってゲームっていくつかあるんです。

 

ここ数年で特にそう思ったのが、スクウェア・エニックスよりスマホ向けゲームアプリで配信されていた「予言者育成学園」。プロデューサー兼ディレクター兼デザイナー兼シナリオ担当が藤澤仁さんという方です。ドラゴンクエスト7、8、9、10の制作に関わっている方です。

 

藤澤さんの作るシナリオやシステムは一見めんどくさい、例えるとA→B→C→Dと進めるものをA→B→A→C→A→Dと進めさせるような煩わしさがあるんですが、よくよく考えてみるとゲームプレイヤーを置き去りにしない、万人にわかりやすくなるように作られている感じなんです。なのでゲームに慣れている人からするとめんどくせーってなりがちなんですが、慣れてない人からするとプレイしていくうちに自然に理解できる、そんな丁寧なゲーム作りをするクリエイターさんです。

 

そんな藤澤さんがドラクエシリーズから離れて立ち上げたゲームが予言者育成学園。そのゲームが先日3周年を迎えました。ゲームの内容がまた独創的でこちらの動画

 

を参考にしていただければと思いますが、(見れない方はコチラから)「仮想世界ジパング(日本)で起こる現実の出来事を予想するゲーム」という前代未聞のゲームでした。その予想は予言テストと呼ばれ、例えばサッカーの天皇杯どこのチームが優勝するか?みたいな問題が出てきて優勝するチームを予想します。当たればお金がもらえたりレベルが上ったりする、というシステムです。

 

味方側のキャラ全員にストーリーが用意されていて、メインストーリーとともに徐々に開放されていきます。そのボリュームも非常に厚く、楽しめる内容となっていました。シナリオが素晴らしい上に何よりその「予言テスト」というシステムが斬新で一緒にドラクエ10をプレイしていた仲間たちとこぞってこの予言者育成学園にハマりました。ハマりすぎて、

 

 

気になった予言テストのイベントを見に行ったりしました。

 

岩手県紫波郡矢巾町で行われた「ちゃぶ台返し世界大会」。ちゃぶ台を引っくり返してちゃぶ台の上にいるサンマの人形をぶっ飛ばしその飛距離を競う大会で、たしか予言者育成学園の予言テストでは「優勝者は何メートルサンマを飛ばすのか?」だったと思います。そのテストの説明文にシュールさを感じ、思わずこのちゃぶ台返しを見に行ったのです。

 

 

普通のスーパーの駐車場に設営された特設会場ではとりあえずみなさま小芝居をした後なにか一言叫んでちゃぶ台をひっくり返していました。

 

 

予言者育成学園がなければわたしは岩手県紫波郡矢巾町に行くことも、しわぐんやはばちょうと地名を読むこともなかったでしょう。

 

わたしの他に仲間たちはカラオケのテーマは愛、この日一番愛のつく曲で歌われるのは?なんて問題の時にカラオケ屋にこぞって行ってマニアックな選択肢の曲を歌いまくって未来をひん曲げたりしていました。

 

そんな楽しい予言者育成学園も、サービス開始から2年と4ヶ月でサービス終了しました。惜しむ声が非常に多かったのですが、サービス終了となった要因に藤澤さんのスクウェア・エニックス退社が一番の要因なのかと思います。が、わたしはもう一つ原因があると思いまして、それは、

 

全く課金しなくても十分楽しめる

 

が問題だったのではないかと考えます。と、いうかソシャゲーなので課金要素はあるにはあったのですがその課金すると貰える「アメジスト」というゲーム内通貨がゲームをプレイしているとあほみたいに貰えるんです。おそらくソシャゲに慣れてないユーザーに対応した藤澤さんの心配りでしょうが、その結果集金がうまくいかなかったんだろうなぁと思います。さらに藤澤さんって親切すぎてソシャゲに課金してサービスが終わったら何も残らないのは寂しいとか言って、

 

1万円課金でオリジナルタロット、2万円課金でオリジナル・サウンドトラック、3万円課金で設定資料プレゼント!とかやってしまったのです。課金額に応じてプレゼントなんて他に聞いたことありませんしモンストが同じ事やったらわたしゃ軽自動車くらいはもらわないと割が合わない笑

 

と、言うわけでわたしは、

 

 

特にゲームに課金する必要はなかったのですが、予言者育成学園に

敬意を称して3万円課金しました笑

 

射幸心を煽られてアプリ課金の経験は当然ありますが、後にも先にもゲームクリエイターを思って課金したのはこれだけですわ。このプレゼントは宝として我が家でしっかりと保管してます。もったいなくて開けられない笑

 

そんな訳で、わたしのようにこの予言者育成学園を愛した人たちのツイッターで、ゲームはサービス終了されているのに数多くの3周年お祝いメッセージがありました。代替品になるゲームシステムのアプリがありませんし、ここまでユーザーの事を考えてるゲームもそうそうありませんしねぇ…

 

まぁ、終了しちゃったのはもう仕方ないですし藤澤仁さんはフロム・ソフトウェアというゲームメーカーに現在いらっしゃるみたいなので、新しい職場でのご活躍を期待してます。でも予言者育成学園も正直打ち切り漫画みたいな終わり方をしてるので、きっと何とかしてくれるだろうなーなんて思っています。

R3.2.26追記・藤澤仁さんはフロム・ソフトウェアで短期的実験的なプロジェクトに取り組んだ後、株式会社ミクシィで次世代エンターテイメント室長に就任し、現在は株式会社ストーリーノートという物語づくりの専門会社を立ち上げご活躍されています。

 

と、言うわけでゲームづくりには向いてないおよが藤澤さんには期待していますというお話でした。なんでまたこんな事書いたかって、

 

そりゃ

藤澤さんから

いいねを

貰ったら

記事を

書いちゃうわ

 

予言者育成学園3周年記念をコメントつきリツイートしたらいいね貰えまして。こんな末端の1ユーザーにまで丁寧に対応するから皆に支持される人なんだなぁって思い、これからも藤澤さんを応援するという言葉を結びとしてこの記事を〆させていただきます。

クリエイターに恋して” に対して4件のコメントがあります。

  1. ふくちゃん より:

    そのゲームやってました。ちゃぶ台返し!しかも世界大会!!!?
    世の中にはまだまだ不思議なものがたくさんありますね。

    1. およ より:

      アクティブ最大2万人のマイナーゲームをプレイしていただいてありがとうございました笑
      わたしはツレがドラクエ10の人達だったので周りにこのゲームしてる人多かったけど、悪くいう人はいなかったですねーまたやりたいなぁ予言者…
      わたしも知らなかったんですけど、ちゃぶ台返し世界大会は意外と歴史があるんですよね、詳しくは専門のサイトで笑
      この会場の近くでもないんですが、岩手の郊外に「オセン」って伝説のスーパーがあって、このちゃぶ台返しの会場の後に寄ってみたのですが…

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